【自転車実験室】リアホイールを組み直す 〜設計見直し編〜
■センターが出ない!
ホイールを組んだ当初から感じていたのですが、想定したテンションで組み上げると、リムが反ドライブ側に寄ってしまい、センターが出るように組み上げると、ドライブ側のテンションは想定より高く、反ドライブ側は低くなってしまいました。先日のIRC TIRE 90th Annivesary Cupの時も前の週にチェックしたら振れていて、振れを取ったらリムが反ドライブ側に寄ってしまいました。タイヤを装着した状態で使えるセンターゲージを持っていないため、タイヤを装着し直すのが面倒になり、レースはブレーキを調整してそのまま走りました。
■センターが出ないとはどういうことか?
仮説としては、
「スポークの長さが合っていない」
ということでは無いかと考えました。想定したテンションでリムが半ドライブ側に寄ってしまうということは、ドライブ側のスポークが長過ぎる、という事ではないか?ということです。
①スポークテンションを見直す
このホイールを組んだ当初の設計値が以下の通りです。
ここで注目したいのが、赤枠で囲った「スポークテンション」です。
この時、ドライブ側のスポークテンションを「107kgf」に設定しました。これは使用しているテンションメータの換算表で出しやすい値だからです。
私が使用しているParkToolのテンションメータでは直接kgf単位でスポークテンションを出すことができません。ここで思うところあり、テンションメータの目盛りとスポークテンションの関係をグラフにしてみました。
テンションメータの目盛りとスポークテンションの関係が二次曲線です!
つまりこのグラフから、
目盛りとテンションは正比例しない事を理解していないと、狙いに対する誤差が大きくなる。
という事が言えます。
テンションが低いときにニップルを回すのを慎重になり過ぎると、テンションメータの読み方次第で思ったよりテンションが低くなってしまったり、テンションが高い時に大胆に回すと、テンションメータの目盛りはあまり変化がなくても、実際のテンションは大きく変動している可能性があります。
これで当初疑問に思っていた、「ドライブ側のテンションは想定より高く、反ドライブ側は低くなってしまう」ということの説明がつきます。ドライブ側に対して反ドライブ側のテンションは、
68.57 / 107 * 100 = 64.08(%)
で、大きな開きがあります。少しでもテンションの差が小さくなるように工夫して、反ドライブ側のテンションを高くできればこの問題は解決に近づきそうです。
②組み方を変える
スポークテンションは、構成部品の寸法で決まってきます。ハブやリムの寸法は変えられませんが、スポーク長だけは組み方で変えることができます。ネットで調べたところ、「ヨンロク組み」という組み方を発見しました。
大阪のホイール組みを得意とする自転車店のようです。行ったことはありませんが、ブログの情報量が凄まじく、読み込んでしまいました。かなり有名なようで、あちこちで関連情報を見かけました。
「ヨンロク組み」は、ドライブ側を4本組、反ドライブ側を6本組とする組み方です。
実際にExcelで計算してみると、
68.57kgfから70.68kgfで約3%テンションを上げることができる計算になりました。
たかだか3%と思われるかも知れませんが、関係するスポークはこの場合14本あります。
14本すべてが3%ずつテンションが上がると考えると馬鹿にならない数字です。
「のむラボ」の「ヨンロク組み」の目的は左右のテンション差是正の工夫と書いてあります。尊敬です。
③各部寸法の見直し
先程の「のむラボ」のブログを読んでいると、目を疑うエントリがありました。
エントリの中身に、私が使用しているFH-9000の寸法が書かれており、フランジ⇔センター間の寸法が私が設計に使用した値と違います!
慌てて私もシマノの製品仕様書の情報を探しに行きました。
私が使っている28hはフランジ間が56.5mm、オチョコ率と呼ばれるフランジオフセットが9.95mmとなっています。計算すると、
ドライブ側:56.5 / 2 + 9.95 = 18.3(mm)
反ドライブ側:56.5 / 2 - 9.95 = 38.2(mm)
となり、のむラボのエントリとも値が合致します。
私が当初実測から出していた寸法は、
ドライブ側:17.1mm
反ドライブ側:36.05mm
だったので、センターが1mm程度ずれていた事になります。これで想定したテンションで組むとリムが反ドライブ側に寄ってしまうことの説明が付きます。結局採寸ミスかよ!工業製品を使うときは、現物の実測は必須ですが、仕様書を読み込むのも必須です。仕様書の読み込みが足りないとは、お恥ずかしい限りです。
以上の3点から設計を見直し、スポーク長を再計算して、以下の通りとしました。
ちなみに、フランジ⇔センター間の寸法を修正した後でも、スポーク長は小数点以下しか変化しませんでした。確かに300mm程度あるスポーク長に対して1mm程度の横ずれでは、スポーク長の整数部が変化しないのは納得です。ですが、これでも想定したスポークテンションで組めなかったわけですから、まだ検討が足りない部分が有るということです。今後も組み続けて経験値をためていきたいですね。
スポーク長が決まったので、早速お馴染みの自転車店Circlesにスポークとニップルを買いに行きました。
スポークがPhilWoodの#14ストレートで¥80/本、ニップルはPhilWoodが在庫切れだったので、DT Swissのブラスニップル¥20/個、スポークカットとプレップ塗布で工賃¥1,000。プレップは長さが違うスポークで色違いを塗布してあり、工賃は正直安いと思います。合計で¥3780(tax in)でした。リムは¥10,000近くするし、ハブも高いですが、スポークとニップルだけならそんなに高くないので組み直しに踏み切ります。
次回は実際に組み立てていきます。