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【書評】ハイペリオン、ハイペリオンの没落 著:ダン・シモンズ

俺は傑作を読んだ!確信させてくれる作品でした。

 

 

  

 

 

あまりの面白さに一気に連続で4冊読んでしまいました。28世紀辺境惑星「ハイペリオン」を舞台に綴られる物語。あまりの情報密度に脳が震える感覚を味わいました。早く続きが読みたくて、Kindle本として購入しましたが、文庫版で買い揃えて常備しておきたい傑作です。

 

私は知識がありませんでしたが、「ハイペリオン」と「ハイペリオンの没落」は18世紀に早逝したイギリスの詩人、ジョン・キーツの未完の作品名と同じもので、ジョン・キーツをモチーフにしたと思われる箇所が要所にあります。

 

本書の初版は1989年で、作中にはそれ以前に出版されたSF小説を読んでいるとニヤニヤさせられてしまうシーンや、逆にそれ以降に出版されたSF小説や、SF映画がモチーフとしたであろうシーンが多く見受けられます。SFだけではなく、影響を与えた作品も少なく無いのではないでしょうか。

 

内容は長く、猛烈に濃く、著者の熱量を感じました。「ハイペリオン」の上下巻だけでも猛烈に楽しめますが、エンディングで残された謎が気になってしまうので、「ハイペリオン」上巻で面白さを感じた場合は「ハイペリオンの没落」下巻まで買ってしまう事をおすすめしたい。

 

本書のテーマは各種あると思うのですが、宗教についての批判と思想も素晴らしかった。旧約聖書に描かれる、ノアの洪水後に最初に神に祝福される預言者、「アブラハム」のジレンマについて描かれていたのは強烈な印象がありました。私は、旧約聖書ではアブラハムの活躍が最も面白い(とかいったらカトリックに何と言われるかわかりませんが)と思っていて、本書でもそれに関わるストーリーが本当に面白かった。結末に救いはあるのかハラハラしながら読みました。

 

 アブラハムの活躍についてはぜひ旧約聖書をお読みいただくと良いと思います。Kindle版で¥99です。全能の神にも交渉を挑み成果を出すアブラハムは、西洋史最初の根越エータでありプロジェクトマネージャであると思います。

 

あと、サイバーパンク好きならば納得の章もあります。

ニューロマンサー (ハヤカワ文庫SF)

ニューロマンサー (ハヤカワ文庫SF)

 

 「攻殻機動隊」が好きなら楽しめるであろう「ニューロマンサー」を読んでいるとニヤニヤできてしまうシーンも。攻殻機動隊の電脳空間をイメージしながら読むと想像力が膨らむシーンも盛り沢山でした。

 

 「ハイペリオン」「ハイペリオンの没落」に散りばめられたストーリーは、他書も読んで再び帰ってくることができる情報量でした。おそらく今後も折に触れて読み返すことになる傑作です。読めてよかったと心底感じています。

 

「もっと早く読んでおけば良かった」と思える作品もあると思うのですが、「この歳になってから読んで良かった」と思える作品です。他の作品を知ったことでより楽しめたからです。本作を読んで「ジョン・キーツ」にも興味がわきました。

 

SFを読む最大の楽しみである「センス・オブ・ワンダー」を体験できる本作。強烈な読書体験をしたい方にぜひおすすめします。