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技術系サラリーマンの生活実験

【自転車実験室】ChrisKing のBB をオーバーホールしました

自転車でオフロードを走る人にとっての急所の一つ、BB(ボトムブラケット)。自転車の主たるベアリングの内、BBは最も地面から近く(正確にはクランク下死点のペダル軸)、ダメージを受けやすいベアリングです。梅雨時はシクロクロッサーにとってメンテナンスシーズン。私のシクロクロスバイクに組み付けているChrisKingのBBのオーバーホールを試みました。

 

■BBは汚れる

BB、ボトムブラケットはクランク軸を支えるベアリングユニットで、自転車の中で最も巨大なパワーがかかる部分の一つです。また、地面から最も近い箇所にあるベアリングなので、私のようなシクロクロッサーには泥汚れの影響等が気になるポイントです。しかし、BBは安い。DURA-ACEグレードでもAmazonで¥5,000を切る価格で買えます。シクロクロッサーならシーズン毎に交換してもいいくらい。そんな中、私のシクロクロスバイクにはChris KingのBBが組み付けてあります。

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正直高級品です。しかし、私はある一点からシクロクロスバイクにこのBBを選択しています。それは

「グリスアップしやすい」

というもの。

 

先程の写真は掃除が終わった後ですが、シクロクロスで3レースほど走った後のBBは、

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こんな状態に・・・

雨のレースや砂のレースを乗り越えると、BB周りのグリスに砂や泥が付着しトンデモナイことになってしまいます。かと言ってパーツクリーナーを吹きかけると中のグリスが落ちてしまうので通常では拭き取ることしかできません。しかしベアリングに詰まったグリスにも汚れが侵入していることは必至です。

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そこで役立つのが「BB Grease Injector Tool」です。税別7,800えん。

何ができるのかというと、「ChrisKingのBBをフレームから外すことなくグリスを再充填することができる」というものです。先程の写真の通りクランクを取り外したBBに、グリスガンに接続した「BB Grease Injector Tool」を突っ込み、グリスガンのトリガを連打するだけ。そうするとBBの隙間から古く汚れたグリスがグニグニ押し出されてきます。これが気持ちいいのです。

今までCultureClubのレンタルピットで借りて使っていたのですが、家でも作業したい、という気持ちが高まりすぎてついに購入。

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問題はグリスガンも別途買わないといけない、という事です。

 

■グリスガンを買う

「BB Grease Injector Tool」は、それ単体では使用できません。グリスを押し出すグリスガンが必要です。前項の作業風景に写っていたグリスガンは、CultureClubのレンタルピットで借りたアメリカDUALCOのグリスガン。日本では入手性はあまり良くありません。各種調査の結果、

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このグリスガンを購入しました。

大阪のグリス関連メーカ「AZ(エーゼット)」の「1ウェイ チッコイ グリースガン 品番(GF201)」です。商品名がまんま関西のノリ。利点は、近所のホームセンタで売っていて、かつ安いということ。税別¥632。

使うグリスは同じくAZのリチウムグリス。ジャバラ式のチューブ入りです。

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コッチの値段は忘れましたが80g入りで¥300弱。安い。

 

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グリスガンの先端はレンチで外せるようになっています。何故か「BB Grease Injector Tool」に最初から付いていたニップルも、このグリスガンの先端も11mmでした。11mmのレンチは所有していないので小型のモンキレンチで取り外しました。

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グリスガンの先端に、取り付ける予定のリチウムグリスを塗ります。

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取り付けました。完全固定が目的ではないので、手で回して止まる程度にしてあります。

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さらにグリスのチューブをねじ込んで完成です。グリスのチューブがブニブニして頼りない。

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数回トリガをポンピングすると、先端部から勢いよくグリスが飛び出します。ペーパータオルで覆ってから試すことをお勧めします。

AZのリチウムグリスは、CultureCulbで使っている「Sim Grease」より粘度が低く、軽いポンピングであっさりとグリスが出ます。使ってみると思った通りグリスが充填できました。ChrisKingのBBを使っている方は是非試してみて頂きたいです。

 

■結局オーバーホール

しかし、いざクランクを着けて回してみると、砂を噛んだような「シャリシャリ」音がBBから聞こえます。どう考えても東海シクロクロス名物「ワイルドネイチャープラザ」の砂がBBに噛み込んでいるとしか思えません。

コレはオーバーホールしかない。

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買ってしまいました。ChrisKingのBBの組み付け専用工具「BB CUP TOOL」税別5,500えん。今まで自転車店Circlesにお願いしていましたが、ついに自分で手を出す事に。こうやってたまにしか使わないSST(Special Service Tool)が増えていくのが整備好きの問題点ですね…20年近く使っているKTCのスピンナハンドル(9.5sq軸)に着けて使います。ねじ切り方向に気をつけてBBを取り外します。

 

取り外したBBから、シールを外します。

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Chris King本人が来日した時にBBのベアリングシールを外すところを見せてもらっているのですが、何が尖ったものがあればスナップリングとシールは外せる作りになっています。手持ちの精密ドライバで一番小さいマイナスを使ってスナップリングとシールを外します。スナップリングプライヤは必要ありません。写真で外そうとしているのが金属のスナップリング、その内側にゴムシールがあります。どちらも新品が日本国内で調達可能です。が、今回は再利用。

 

外したスナップリングとゴムシールです。

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裏側にグラスに絡んだ砂がビッシリ。

 

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ゴムシールにも同様に砂がビッシリです。コレはアカン。

 

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開けたばかりのBBです。グリスが黒い。ここまでダメージがあることがわかると、毎シーズンオーバーホールを確実に実施したい。

 

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清掃しました。パーツクリーナとスプレ缶タイプのエアダスタを使って汚れを落としました。

 

清掃後のベアリングにグリスを打ち、逆の手順でシールを元に戻します。

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戻せました。ChrisKingのBBの気に入っているところとして、この通りオーバーホールできることもあります。考え方にもよるかもしれませんが、私はこれが好みです。

 

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フレームに噛み付くねじ切り部も清掃します。何回も着け外ししてるのでスレッド部のアルマイトが剥げています。

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フレーム側のBBねじ切り部を清掃したら組み付けです。ねじ切り部に新しいグリスを塗布して組み付けです。

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組み付け完了です。

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シマノのクランク用樹脂スペーサーを入れて、

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クランクを組み付けて完了です。クランクを回した時の「チャリチャリ」音は消えました。

 

こういうベアリングとかのオーバーホールは取り掛かるまでは超面倒なんですが、いざ始めると止まらない楽しさがあります。今回BBを開封してみて、シクロクロスバイクに実装されたChrisKingのBBは、少なくとも年一回のオーバーホールが必要と感じました。シマノのBBであれば安いので、私ならシーズン毎に交換したくなりました。BBのダメージは大きい。

ChrisKingのBBは高価ですが、「オーバーホールできる」という観点で私にピッタリでした。満足しています。今後もマメに整備して行きたいです。