【自転車実験室】ChrisKingのR45ハブでホイールを組んだ話
ついに、このハブでホイールを組む時がきました。
ChrisKingのR45ハブです。
私のシクロクロスバイクには、ChrisKingのヘッドとBBが組まれています。組んだ当初はそこが予算の限界で、ホイールは105ハブで値段を抑えて組んでもらいました。当時はまだ自分でホイールは組んでいませんでした。
「いつかはR45ハブで…」と思ったまま時は過ぎ、2018年の冬、ずっと欲しかったマンゴーカラーの生産中止を聞き思わず注文。そこから半年、その他部材の資金がやっと準備出来ました。自転車趣味で最も気合を入れたホイール組みが始まります。
■リムの選定
ハブはChrisKingのR45ハブ(前後28h)で決まっています。それに対するリムが悩みました。
条件は
・アルミリム
・チューブレスレディ
・タイヤの外れ止めがあること
の3点がMUST。カーボンリムは私にはまだ早いです。
候補に上がったのは、
引用:Hedcycling.com
頑丈でチューブレスレディ。しかし日本で調達するにはアルミリムとしては¥20,000を軽く超えてしまい、値段が高過ぎる印象。アメリカでの売価は$165です。
引用:
好みだが、こちらも日本での定価は税別¥20,000で値段がアルミリムとしては高く感じる。
引用:dtswiss.com
日本では¥10,000程度で比較的手頃で品質に定評あり。専用ニップルも付属しています。しかし、タイヤの外れ止めがないので低圧で走るシクロクロスバイクでチューブレスレディは個人的にはNG。高圧で走るロードやピストはコレで組んでみたいです。
悩みに悩んで結論、
コレになりました。極端にスポーク本数が少ない見た目が特徴的なホイールブランド「Rolf Prima」の手組みリム部門「Astral Cycling」のアルミリム、「RADIANT」です。
リム高32mm、リム幅23mm、重量公称495g。
先程までのリムと比較すると以下の通りです。
選定したAstral CyclingのRADIANTは一番重たいのですが、私が重要視しているチューブレスタイヤの外れ止めがあること、頑丈さで定評のあるHEDのBELGIUM+ C2より安く、かつ私の周辺で誰も使っていない、という理由が有りました。EASTONのR90SLよりも安い。使用目的としてはレースではなく、日常やアドベンチャーライドで使用するのが主たる目的なので、レア度と価格、重たいから多分頑丈ということも大きかったです。後輪を組む時のオチョコ率低減に効果のあるオフセットリムの設定があるのはDT SWISSだけでした。用途が限られるので、普通は採用しにくいように感じます。致し方無し。
今回採用を決めたRADIANTの購入情報は日本国内のWebでは探しきれませんでした。アメリカ本国のAstral Cyclingに問い合わせると、「日本のRolf Prima特約商社であるJSK Cycling Forceに問い合わせて欲しい」との回答。JSK Cycling Forceに問い合わせると、「取り寄せ可能。Rolf Prima取扱店に問い合わせて欲しい」とのこと。どちらも即日回答をくれて、大変親切な印象を受けました。
私が在住している名古屋近郊にもRolf Prima取扱店は何件かありますが、どこも馴染みがありません。そこで、シクロクロス会場で知り合った大阪の名店、「BICYCLE STUDIO MOVEMENT」に取り寄せをお願いすることにしました。
タイミングが良かったのか、注文して2週間で届きました。
さて、届いたリムの重量測定です。
496gと499gでした。公称495gに対して最大+0.8%のズレ。大変優秀な作りと感じました。
チューブレスタイヤのビードが乗る部分に外れ止めの突起が有り、希望通りです。
穴のある「谷」の部分の突起は謎です。
ロゴステッカーをよく見ると気泡があります。気泡を押し出そうと思ってもできませんでした。このあたりの作りは雑に感じます。
■スポーク長計算
これまで私は自分のホイールのスポークは#14(φ2.0mm)のスポークしか使ってきませんでした。新たな挑戦として「バテッドスポーク」を使ってみることにしました。
バテッドスポークは、スポークの首折れ部とねじ切り部の間が少し細くなっているスポークで、太さの変わらないスポークよりも高級品です。エアロスポークもバテッドスポークに分類されます。今回はバテッドスポークで定番のDT SWISSのCompetitionを選定。スポーク太さを#15(φ1.8mm)の前提で計算してみました。後輪の組み方はドライブ側4本組み、反ドライブ側6本組みの「ヨンロク組み」計算結果は以下の通りです。
今回は実測ERDと公称ERDをが一致しました。リムのメーカによってERDの考え方が違うようです。今後は自分で実測したERDを基準にスポーク長を決めていきたいです。
前回の反省から、後輪のドライブ側を-2mmした補正値としました。早速Circlesに注文です。
が、今回は今までと違ってバテッドスポーク。少し懸念が発生しました。
算出したスポーク長ですが、Circlesの在庫に対して
276mm:在庫無し。要カット。
271mm:在庫無し。272mmが在庫有り。
284mm:在庫無し。283mmが在庫有り。
でした。欲しい長さに合わせてバテッドスポークを注文するのも納期がかかりそうですし、リアは目標に対して1mm違い。今回は前輪だけスポークをカットしてもらい、残りは在庫で済ませることにしました。後輪をカットしてもらわなかったのにはもう一つ理由があり、
スポークの首折れ側に対してはバテッド加工によるスポーク径が変わる位置が同じに対して、
スポークをカットするとなるとねじ切り部の太さが変化する位置が変わってしまうので、可能な限り出荷状態から変化が少ない状態を狙いたかった、というのが理由になります。
■ホイール組み〜前輪
スポークを買ってたので組み立てです。
以前からCirclesで聞いてはいたのですが、Chris KingのR45ハブはフランジ厚みが大きく、首折れ部φ2.0mmそのままだとスポークがフランジに添いません。シマノのDURA-ACEグレードのFH-9100と比較してもフランジが厚く、通しただけではスポークは全然動かず、
写真の通りスポークが立ちます。シマノのハブならこうは行かないです。
前輪が組めました。ヨンヨン組み、銀アルミニップルです。
バルブ穴とロゴも合わせました。
スポークは、バテッド部が始まる前の部分で交差しました。エアロスポークで組まれたホイールだとバテッド部で交差する印象だったので意外でした。DTのCompetitionは首折れ側のφ2.0の部分が長く感じます。
見えにくいですが、スポーク長は狙った長さで組めました。
■ホイール組み〜後輪(1回目の失敗)
続いて後輪です。実はここからが試練の幕開けでした。
後輪はヨンロク組みです。ドライブ側と反ドライブ側で組み方が違うので、スポークを通す場所を間違えないようにバルブ穴付近から通し始めます。
仮組み出来ました。まだニップルを締め上げていないのでスポークはたるんたるんです。
リム側から見るとスポークが外に膨らんでいます。
実際には両手でやりましたが、スポークを左右からしごいてスポークの首折れ部がハブのフランジに沿うようにクセをつけます。
スポークにクセがつきました。すでに組み上がったみたいにスポークが真っ直ぐに整いました。
リム側から見てもいい塩梅です。ハブのフランジ厚みによるスポークの保持力がハンパ無い。さて、ニップルを回してスポークのテンションを上げていき、フレを取って行きます。が、スポークテンションが限界に近づいてきたとき、恐ろしい事態になりました。
ドライブ側のニップルはほぼ限界(スポークのネジしろ限界)まで締めたのに、
反ドライブ側のスポークはまだネジ山が見えています。
なのにセンターゲージを当てるとガッツリとリムが反ドライブ側に寄っています。ここまでの事態に陥ったのは正直初めてでした。ここからリムをセンターに寄せるとなると、ドライブ側のニップルをさらに締めることになるのですが、そもそもスポークのネジしろ限界まで締めたのでこれ以上閉められません。ここから言えることは、
・ドライブ側のスポークが長すぎる
・反ドライブ側のスポークが短すぎる
の2点です。改めてスポークの長さを見直すと、
ドライブ側:272mm(計算値より1mm短い)
反ドライブ側:283mm(計算値より1mm短い)
です。お互い1mm短くしただけ。それでここまでのずれが出るのは納得いきません。
失敗したホイールを観察すると、ドライブ側と反ドライブ側でスポークが交差している部分の直径が違うことに気が付きました。
写真ではわかりにくいのですが、ドライブ側はスポークの直径が変わるところで交差し、反ドライブ側はスポークの直径がφ1.8mmになったところで交差しています。
「これはスポークの直径が結果的に変わってしまうから誤差が大きくなったのか」
もうちょっと考えればそれだけでは無いことに気がつけるはずなのですが、高価なスポークで失敗した私は動転し、「ストレートスポークで同じ長さで組んでみよう」と結論づけ、バテッドスポークと同じ長さのストレートスポークを注文しました。さようならバテッドスポーク・・・
■ホイール組み〜後輪(2回目の失敗)
2回目は、バテッドスポークではなくストレートスポークで同じ長さを設定し、再度組み直してみました。今度は最初の計算値通り、補正値無しでドライブ側273mm、反ドライブ側285mmで組み直しました。
組めました。・・・と言いたいところですが、実はこの時点でドライブ側のスポークテンションが上げきれず、たるんたるんになってしまいました。どうやら今度はドライブ側のスポークが長すぎるようです。何故だ。何故なんだ。
改めて観察すると、「R45ハブでヨンロク組みをしたから」という理由に気が付きました。ドライブ側の写真を見ると、スポークの首折れ部からはほぼ直線的にスポークが伸びますが、
反ドライブ側は6本組にすると、スポークの首折れ部から数mm、スポークはフランジに沿ってからリムに向かっています。つまり、反ドライブ側のスポークのほうが湾曲する量が多いと言うことです。R45ハブの28hで組む場合、6本組はスポークの経路が想定より長くなってしまい、結果的に反ドライブ側のスポークが短い、ドライブ側が相対的に長くなってしまう、という結論になりました。
反ドライブ側のスポークがもったいないので、ドライブ側だけ2mm短いスポークを再度注文し、ドライブ側だけ組み直しました。結論、今回のホイール組では、ERD:577mmのリムに対し、R45ハブの28hでは
ドライブ側 :285mm(6本組)
反ドライブ側:271mm(4本組)
となりました。
さて組み立て完了です。長かった・・・
バルブ穴からのロゴの見え方はこうなりました。あと1個穴をずらしても良かったかな、という感じです。次回組み直し時にはずらしてみます。
■結線
組み上がりはしたのですが、反ドライブ側のスポークは想定通りたるんたるんです。難しい。そこで古からの技として結線を試みます。前回の反省を生かしてはんだこてとフラックスを新しく買いました。
こてはgootのPX-201です。
マイナスドライバーで調整できる簡易の温調機能がついています。
職場では高価なHAKKOの温調機能付きはんだこてを使っていますが、ホームユースには高過ぎる。これで十分、と思っていたのですが・・・
一番うまく行ったのでこのレベル。正直反省しました。
電線やPCBへのはんだ付けは得意、という自負がありますが、スポークという熱を逃がすものに巻いた針金へのはんだ付けがこれほど難しいとは、改めて自分の経験不足を痛感しました。フラックスをしっかり塗っても、スポークへの熱の逃げが大きく、また鉛フリー半田で半田流れが悪く、芋ハンダと笑われても仕方がないレベルでしか仕上げられませんでした。
正直鉛入りの共晶はんだを使いたいところですが、職業柄鉛フリーで今後も挑み続けたいと思います。まだまだ精進が必要ですね。
■組み上がり
最初にスポークを注文してから2週間近くかかってやっと組み上がりました。
タイヤは事前にクリアランス確認をしておいた「WTB NANO 40C ブラウンサイド」です。センターノブの形状に工夫があり、直線では転がりの良いダート向けタイヤです。チューブレスレディです。組み付けには若干苦労しました。タイヤの仕上げが理由だと思うのですが、ビードフック部からエア漏れしやすいのです。シーラントをビードに刷毛塗りすることでビードシーラとして代用し組付けました。
大事なシクロクロスバイクに組み付けた姿がこれです。
カッコエエ・・・完全に自己満足の世界ですが。
生活の合間を縫って自宅でオーバーホールした自転車です。昨年度からホイール以外にも少しアップデートしていますが、それは別の機会に。
前輪。フォークのエンド部の塗装が剥げているのは、服部製作所でキャリアダボを溶接してもらったためです。鉄のフォークの良さがココですね。
後輪です。今回スキュワーはDT SWISSとしました。Chirs Kingは「DURA ACEがエエよ」と言っていましたが、DURA ACEのスキュワは単体では入手しずらくなりましたし、前から気になっていたDT SWISSのスキュワにする事にしました。使ってみて感じましたが、相当しっかり締め付けできます。これはイイ・・・
組み上がった夜に走りに出てみました。走って数分経つとハブが馴染んできたのか後輪から独特のラチェット音が響いてきます。組み上げるまで相当の困難を伴いましたが、これから長く付き合うことになるハブです。いずれまと組み直したり、オーバーホールに挑む事になるでしょう。じっくり楽しみたいと思います。