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技術系サラリーマンの生活実験

【自転車実験室】Power Tap Pro PLUSでロードバイクのホイールセットを組み直した

私のロードバイクは,10年以上前に買ったBianchiです。これが初めてのロードバイクでした。もともとは6600系のアルテグラにFSAのクランクセットが着いていましたが,私のメンテナンスの練習台としてあちこちいじった結果,購入当初とは全く構成が変わっています。いまだ10速のままですが。(我が家には10速以上の自転車がありません)

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すっかりシクロクロスMTBばっかりになった私ですが,たまにロードバイクに乗ると「速!」とその速さに驚いてしまいます。設計が古くても,やはりロードバイクシクロクロス等に比べると速い。最新のエアロロードにも憧れますが,あちこちいじって愛着もありますし,最新のエアロロードを買うだけのまとまったモノを用意する余裕もありません。一度買ったら長く使う性分,今のスペックでも「速!」となるくらいだから,まだ買い換えず乗るつもりです。しかしホイール組みを趣味にするようになってから,少しだけ不満が積もっていました。

 

後輪は,チームメイトでありライバルのS君から夕食の奢りだけで譲ってもらった,Power Tap Pro PLUSで組まれた手組ホイールです。お陰様でこのロードバイクでもパワートレーニングが可能となりました。クイックはローラー台へ固定することもあるのでミノウラのローラー台用を使っています。

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対して前輪はこの自転車を買った時にセットされていたMAVICの「KSYRIUM EQUIPE」のままです。

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 後輪のハブ胴がシルバーに対して,前輪のハブ胴が黒,さらにリムも前後で違うこともあり,この前後の統一感の無さを何とかしたかったのです。ホイールセットを新たに用意すれば前後の統一感は出せますが,私としては後輪のPower Tapを活かしたい。ホイールセットを前後そろえて,クランク型のパワーメータを導入するより安価です。

 

では後輪に合わせて前輪を組むとなると,シルバーのハブを使いたい。そしてロードバイクのホイールなので,前輪のスポーク本数は減らしたほうがカッコイイ気がする。前輪のスポーク本数を減らすなら,高価だけどエアロスポークを使ってみたい。スポークは最近気に入っている星スポークの「WingStar」を使いたい,と思い至って星スポークに「ハブの丸穴に通せるエアロのWingStarって作れますか?」と勢いでメールを送ってしまいました。

結果は「SUS430ステンレスのエアロは幅2.3mmで一般的なハブに使える。WingStar加工が可能」と即答。メールのやり取りも丁寧だったので,WingStarのエアロが使ってみたくなりました。これで,「WingStarを使って,Power Tap Pro PLUSを活かした前後統一感のあるホイールセットを組む」という命題が出来上がりました。久々のホイール組みの始まりです。

 

■スポークの注文

SapimやDT SWISSのエアロスポークは1本あたり¥350~¥500となかなか高価です。今回後輪は32hですので,後輪のスポークだけで¥10,000以上を覚悟するのは,失敗する恐れもあるので気が引けます。後輪はいつも通り#14のプレーンにして,前輪のみエアロを注文することにしました。

 

で,届いたスポークがこちら。f:id:tkcx3110:20200814125834j:image

特注の「WingStarエアロ#14」です。¥200/本と,他社のエアロスポークと比較して断然安価です。「納期は1ヶ月」と言われていたのに,入金してから3日程度で発送されました。予想より早く納品されて嬉しいですが,納期長く回答し過ぎでしょ。


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エアロバテッドは,首下からすぐ始まっています。


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WingStar加工は,ねじの谷までしっかり施されているように見えます。

WingStar加工は電着コーティングと思われますので,ねじの谷までコーティングできるのでしょう。強度を求めるなら,WingStarのスポークを切って後からねじ山を作るより,ねじ山を作ってあるスポークをWingStar加工してもらうほうがよさそうです。

 

■前輪のハブはVelocityの「Race Hub」

黒いハブは各種見つかりますが,シルバーで穴数が少ない手組用ハブってなかなかありません。ほぼほぼ消去法でVelocityの「Race Hub」になりました。

 

Race Front Hubstore.sim-works.com

 

これなら20hも選べるため,スポーク本数を減らせます。幸い20hのシルバーは在庫が1個だけ残っていました。

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公称80gに対して実測79g。ばっちりです。

 

■リムはTNIの「AL22」

私のロードバイクは設計が古く,今はやりのワイドリムは使えません。また,体重が重い私がリムブレーキでカーボンホイールを使うのは気が乗らず,アルミリムが選定対象になります。カーボンリムは高価なので,ディスクブレーキの自転車を導入するまで買わないと決めています。

 

結果,安い・軽い・入手性が良い,の三拍子そろったTNIの「AL22」を使うことにしました。「AL22W」というチューブレスレディのリムもラインナップにありますが,ワイドリムなので今回は使えません。

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シクロクロス用のホイールを組んだ時に,リムの造りに納得しているので不安はありませんでした。穴数も20hから32hまで選べます。

リム重量は公称393g±3gと,400gを切っており大変軽量です。

 

購入した後輪用の32hのリム重量は,
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は,実測391gと公差内に収まっています。

 

対して前輪用の20hは,
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375g! 軽すぎます。軽量化マニアには嬉しいかもしれませんが,私としては軽すぎてかえって不安になります。私の感覚としてはハズレを引きましたが,仕方あるまい。これで組むことにします。

 

■ホイール組み

スポークが予想より大幅に早く届いたため,なんと仕事のお盆休み前に部品がすべてそろってしまいました。お盆休みで落ち着いてホイールが組めるこの有難さ!

なお,今回の仕様は下表の通りです。後輪のスポークパターンは駆動側4本組み,反駆動側6本組みの「ヨンロク組み」で計算しています。

 

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ニップルは,星のアルミの緑を使うことにしました。最初はDT SWISSのアルミニップルを使うつもりでしたが,注文のメールのやり取りで

ニップルは各社設計思想があるのでメーカを合わせたほうが良い

・スポークの値段に¥3/本加算でアルミニップルに変更可能

・しかしアルマイトが剥げやすく扱いが難しい

とのこと。設計思想の考えは納得ですし,安いのも魅力です。扱いが難しいのなら逆にやる気が出てきました。星のアルミニップル採用決定です。

 

星の#14のアルミニップルはJIS規格のため,Park Toolのニップルレンチは「赤」を使います。以下の写真左は前から持っていたものですが,今回写真右側を新たに導入しました。

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少しサイズが大きくなって,樹脂コートが二重になっていますが,これは見た目の差。

 

実際の違いは以下の写真の通りです。
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左側が「コ」の字に対して,右側の開口部が狭くなっているのがわかるでしょうか。ニップルの3面を確実にとらえる造りになっています。DT SWISSのものは持っていますが,DT SWISSのレンチはJIS規格に対応していません。スポークのテンションが上がってきたら確実にニップルをつかむために右側を使います。

 

また,自身初のエアロスポークでのホイール組みのため,エアロスポーク掴み治具も導入しました。

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Park Toolの「BSH-4」です。スリットが4つあり,それぞれA,B,C,Dの刻印がありますが,星スポークのエアロには「B」のスリットがちょうどよかったです。

 

エアロのスポークテンションは,120kgf付近を狙っていました。初のエアロバテッドなので,テンションメータの換算表を見直します。

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実測の結果1.4 x 2.3mmのスポークとし,120kgfに一番近い20の目盛りを狙って組むことに。

 

組めました。Velocity Race Hub,WingStarエアロ#14,TNI AL22,緑アルミニップルです。

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自身初のラジアル組み,前輪ということもあってそこまで難しくは感じませんでした。タンジェント組みより縦振れ取りがしやすい印象。

 

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スポークテンションは目標通りテンションメータの目盛り20付近まで追い込めました。



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リムテープ,クイックレバー無しの重量が587gになりました。だいぶ,というかかなり軽い印象です。この構成,あまりお金をかけたくないヒルクライマーにはアリなのでは・・・?

 

続いて後輪です。組んであったホイールをばらし,ハブ単体にしました。
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重量は583gとずっしりした重さ。組みあがった前輪と4gしか違わない!

 

こちらも組めました。Power Tap Pro PLUS,WingStar#14,TNI AL22,緑アルミニップルです。タンジェント組みは毎回組み始めは「こんな振れ取れるのか?」と心配になるくらいグワングワンとホイールが振れるのですが,最終的に収まって行くのが楽しいです。

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組みあがったら結線です。これだけのラージフランジでも,オフセットしていないハイトの低いリムのため,どうしても反駆動側のテンションがヌルくなります。結線で補強したほうが良い,というのが体重の重い私の考え。
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結線は相変わらず難しいです。針金の縛り方もそうですし,はんだ付けも難しいです。縛り方についてはまだまだ検討が必要です。

 

組みあがったらリムテープの装着ですが,今回は「Velo Plug」を使いました。こちらはCultuer Clubで入手した中古品を使っています。

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クリンチャーリムの場合,リムテープが中でずれて穴がわずかに露出してしまい,そこにチューブを噛んでパンクさせたことがあるので,一度使ってみたかったのです。

 

ただし,リムの溶接部には以下の写真の通り溶接跡と謎の小穴が空いていたので,
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その部分だけチューブレスレディ用のリムテープを貼りました。
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全周リムテープ貼ればええんちゃうんか,というところですが,リムの内幅が14mm程度なので,適切なリムテープがありません。21mmのリムテープを細くして対応しました。

 

■自転車へ組付け,実走

灼熱の時間帯を避けて,走りに出ました。久しぶりにロードバイクで外を走りました。

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速い。とにかく速い。漕ぎだしがすごく軽いですし,登坂でダンシングすると「シャッ,シャッ」とキレのある音がタイヤからします。緩やかな登りのカーブで踏み込んで加速する感じがすごく気持ちいいです。シクロクロスでロングを走る時と全く違うこの加速感は,やはりロードバイクじゃないと得られない感覚です。やっぱり手放せない。

 

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自身初のラジアル組である前輪。ダンシングでもしっかり受け止めてくれている印象です。今回,タイヤもチューブも奮発して,タイヤはコンチネンタルのGP5000,チューブはPanasonicのR-Airを使いました。


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後輪はスポーク32本のヨンロク組み,結線あり。ハブが重たいためホイールとしての重量はありますが,踏んだ分だけ路面に力が伝わる感じがします。高級な完組みホイールには及ばないとは思われますが,なかなか「進むホイール」になっていると思います

 

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前輪のハブ胴が希望通りのシルバーに。太陽の光を浴びてWingStarの色がきれいに見えます。


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後輪も同じくシルバーのハブ胴,統一感のあるホイールセットになりました。


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リムには,バルブホールを上にしたときに車体の後ろ側になる部分に星スポークのステッカーを貼りました。スポークを買ったときにおまけで付けてもらいました。TNIのロゴステッカーは主張が激しすぎるので剥がしています。

 

自分で組んだロードホイールで走りが楽しい。早起きして走りに行って最高の気分です。もっとホイールが組みたいですが,ホイールばっかり増えても仕方がないのが悩みどころです。次はどの自転車でホイールを組もうか,今から妄想を膨らませています。

 

 

ちなみに,先ほどの写真を撮る前,家から20kmちょっとの登坂の最中,組みたてのホイールにおろしたてのチューブとタイヤでさっそくパンクをメイクしてしまいました・・・

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スローパンクでした。下りの途中じゃなくて本当に良かった・・・ツイてる。

公道でパンクしたのはいったい何年ぶりか,という勢いです。原因は,組みつけの時に新品のコンチネンタルGP5000のビードが大変硬く,後輪は何とか手だけではめたのですがそこで握力を使い切ってしまい,前輪をはめるときにタイヤレバーを使いました。その時にチューブに傷をつけてしまっていたようです。チューブにレバーの先端の跡が残っていました。高級チューブをさっそく傷物にしてしまうとは・・・やっぱり何かやらかしてしまうのでした。落ち着いて修理します・・・