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技術系サラリーマンの生活実験

【自転車実験室】シクロクロス用リアホイールのスポークを「結線」してみた

私のシクロクロス用の主ホイールは、VelocityのA23リムDURA-ACE9000系グレードのハブで自作した初号機にあたるものです。

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少しはマシに組み上げられるようになるまで失敗を繰り返し、シクロクロスのC4で2回の表彰台を経験した、まさに私を育ててくれたホイールです。思い入れのあるホイールですが、少し不満に思う所もあり来シーズンこそ組み替えたいと考えています。不満に思っている所についてはまたの機会に。

 

しかしまだ今シーズンはこのホイールで走りきりたい。しかし何らかアップグレードはしたい。方法はないか考えた結果が古から手組みホイールの技術として伝わる「結線」であります。

 

■結線とは

タンジェント組みのホイールのスポークの交差点を針金等で縛り、スポークのたわみによるパワーロスを削減する事を狙いとした技術です。

「ソルダリング」と呼ばれているようですが、これは針金が解けないようにはんだ付けで固定する事に由来していて、スポークそのものをはんだで固定するわけではありません。私の印象では「バインディング」の方が近いのではと感じています。

 

シマノのロード用ドライブトレインが11速化した時から、ハブのドライブ側のフランジは10速の時よりセンターに寄り、ホイールを組んだ時のスポークの偏りが大きくなりました(オチョコ率の増大)。結果ドライブ側と反ドライブ側のスポークのテンション差が大きくなり、10速時代と比べて大変組みにくくなっています。実際私の組んだリアホイールも、ドライブ側のスポークはカッチカチに張ってありますが、反ドライブ側のスポークはタルく、握ってみるとフニフニたわみます。レースが終わるとよくスポークの交差点に草が挟まっているので、レース中は激しくスポークがたわんでいる事がわかります。

 

スポークがたわむという事は、伝わったパワーの一部が逃げてしまい、あまり「掛からない」事になってしまいます。ここでテンションの低い反ドライブ側のスポークの交差点を縛り、たわみを抑制する事で「掛かり」を良くするのが今回の結線の狙いです。実際の効果はあると期待していますが、どれ程の効果があるのか数字で測れないのが悩ましい所です。

しかし、「究極の回転体」と称される高級ホイール「ライトウェイト」でも「結線」している事を考えると、効果はあるはずです。

 

www.podium.co.jp

 

■針金を巻く

タコ糸やテグスと瞬間接着剤を使う手法もあるようですが、「針金を使ってはんだ付けで結び目を留める」という古来から手法を使う事にしました。

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針金を買ってきました。φ0.3mmの亜鉛メッキ品¥105です。「結束など」と表書きがあるのでちょうどええやん。サビ防止のためステンレス品にして、ステンレス用のはんだを使う事も考えましたが、スポークごとはんだ付けしてしまう可能性もありやめました。

結び方についてはいろいろ方法があるようなのですが、自分で色々やってみて、以下の方法に落ち着きました。

 

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スポークの交差点に写真の通り針金をかけ、軽く引っ張ります。

 

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交差するように反対側に巻きます。この時針金の両側をペンチで掴んで軽く引っ張りながら巻いています。

 

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そこから両側とも4回ずつ巻きました。

 

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4回ずつ巻いた後に、巻いた針金の内側をくぐらせるように交互に通します。ここで通し方が悪いと針金がキンクしてしまいうまく通せず、最悪切れてしまいます。

 

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通せました。

 

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通した両端をねじってまとめます。

この時点でスポークを握ってみてもスポークの交差点は動きません。動く場合は巻き方が緩いです。

 

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さらに針金をねじります。

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ねじった部分を少し残して余分な部分をニッパーで切ります。

 

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飛び出した部分を折りたたんで結線部分に沿わせます。これを反ドライブ側の交差点の数だけ繰り返します。

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できました。スポーク数28本のホイールなので反ドライブ側の交差点7箇所です。

 

作業は振れ取り台で行いましたが、机の上でも問題なさそうです。

 

■はんだ付けする

針金を巻き切ったので、はんだ付けで解け留めをします。

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組み込み系ハードウェアエンジニアの私としては、はんだは「鉛フリーはんだ」を使います。

そもそも「はんだ」は、電子デバイスの製造現場で電子部品を回路基板に溶接して電子回路を構成する溶接材です。鉄の自転車のオーダーフレームで「フィレット溶接品」の仕上げと材質は違えど基本は変わらない物です。

はんだには、大きく分けて旧来から使われている「共晶はんだ」と「鉛フリーはんだ」の2種類に分類されます。「共晶はんだ」はスズと鉛の合金で、溶けやすく柔軟性が高く、大変作業性が良い特性があるのですが、有害物質である鉛を含んでいるため、現在のメジャーな電子デバイスの製造現場では使われていません。ホームセンターに行くと普通に売っているのですが。環境負荷物質低減のため、現在一般的に用いられているのが「鉛フリーはんだ」です。

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材質をみると「スズ、銀  、銅」とあります。

電子デバイスのメーカーによってはこの配合比率にノウハウがあり、秘中の秘の技術の一つです。旧来の「共晶はんだ」と比較すると、硬く溶けにくく、物性としては「割れやすい」傾向があります。

 

はんだは割れます。「ドラえもん」でママが映らなくなったテレビを「やく60度」からのチョップで復元するシーンがありますが、あれは経年劣化で割れたはんだで部品の接触不良が起き、テレビの映りが悪くなったところを、チョップの衝撃で接触が一時的に回復し、映りが戻る、というその筋のエンジニアであれば仕組みが理解できるシーンであります。

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引用:Google画像検索

 

スポークの交点という負荷がかかる所に割れやすい「鉛フリーはんだ」を使うのは物性的にはイマイチですが、私も組み込み系ハードウェアエンジニアの端くれ、DIYでも環境負荷物質の低減に取り組まねばなりません。そもそも家庭ではんだ付けをしなければこんな事で悩まなくて良いのですが...

 

はんだコテは、今回普段から使っている40Wのものを使います。ホームセンターで¥1,000ちょっとで買えます。

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こんな感じでホイールの内側にある針金の結び目をはんだ付けします。

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はんだ付けができました。

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針金の結び目だけにはんだを盛っています。

が、個人的な感想としては仕上がりはぶっちゃけNGです。

スポークにはんだこての熱が逃げてしまい、うまくはんだが盛れませんでした。結線に使う場合はもうちょっと出力の高いはんだこてを使った方が良さそうです。次回はフラックス(後述)を使い、60Wのはんだこてを使ってみたいと思います。本当は温度調節機能付きのはんだこてが欲しいのですが、家庭用としては高級過ぎます...

 

フラックスは、はんだ付けを行う時に仕上がりを良くするための酸性の薬品です。通常「ヤニ入り」と表書きに書かれているはんだにはフラックスが含まれていますが、それでも仕上がりが悪い時に使います。酸性の薬品のため、はんだ付けが終わった後にそのまま放置しているとあまり良くないので、作業後は「フラックスリムーバー」で洗います。今回のようなスポークの結線の場合は、電子回路ではないのでパーツクリーナーで問題ありません。

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結び目にしかはんだを盛っていないため、ホイールの外側にははんだは流れて行かず、針金の巻き方のみです。巻き方については今後も実践と検証が必要ですね。

 

■全体を通しての感想

時間がなかったので、自宅前の坂で何回か立ち漕ぎしてみましたが、踏みごたえがしっかりしたように感じます。ちょっとうれしくなって汗をかくまで繰り返し往復してしまいました。ホイールの剛性が上がった印象というべきでしょうか。個人的には成功です。あとはレースの結果につながるかどうか。

しかし、作業の点でいうと大変めんどくさいものでした。私ははんだ付けは特に悩まずできるのですが、針金の巻き方は大変悩みました。市販の完組ホイールのほぼ全てが結線されていないのは、「工程を考えると利益に見合わない」ということと、「販売店での修理にクオリティの差が出過ぎる」ためと感じました。ライトウェイトのような超高級ホイールの場合、完成状態で結線されているのはそれで良いと思うのですが、スポークが折れたときに修理したい中級グレードのホイールの場合、結線してしまうと販売店で作業技術の差が出てしまい、クオリティコントロールが効かなくなると感じました。

 

しかし私の場合は個人の趣味なので今後も継続していけます。来シーズンにホイールを組み直すときも結線は実施したいと思います。また一つ楽しみが増えました。

 

【レースレポート】東海シクロクロス2018-2019 第1戦 平田リバーサイドプラザ C3

ついに私にとって2018-2019年シーズン開幕戦にあたる東海シクロクロス第1戦がやってきました。結論から言うと、「色々準備不足」という残念な結果になってしまいました。しかし、人一倍失敗の多い私としては、気合いを入れ直す良い機会となりました。

 

◼︎事前の準備

レーニングについては昨シーズンの東海シクロクロス新城ステージ後から、ほぼ毎週56Cyclesに通い、パワーに関しては過去最高の脚に成長しました。食事制限が猛烈に苦手な私は体重も大いに成長してしまいましたが…

また、成長したパワーを活かすべく、ペダルを更新しました。ごく一部で話題のXTRショートアクスルです。

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これが思った以上に調子よく、踏面が広く、かつQファクター(自転車の中心軸からペダルまでの距離)が狭いため、まっすぐ脚を下ろしやすく、大変踏みやすいのです。

過去最高に成長したパワーと、それを伝えるペダル。それを備えながらまだ考えが甘いのが私。重要なタイヤの準備まで頭が回っていなかったのでした。

 

◼︎レース前日

体重以外のコンディションは最高の状態で挑みたかったので、レース3日前に56Cycleでトレーニングした後は高負荷はかけずサイクリング程度。食事はしっかり補給をしました。

レース前日の晩御飯は妻の実家からもらった里芋をたっぷり使って芋煮(私の父方の実家は山形県のため、醤油だしに牛肉がメインです。味噌と豚肉は認めない)を作り、

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これまた山形県名産の傑作漬物「晩菊」

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をおかずにご飯をしっかり食べ、しっかりカーボローディングして22時に眠りに着きました。

「晩菊」があると息子共々あっという間に白米がなくなります。

 

◼︎レース当日の朝

5時に起床、5時20分に自宅を出ました。雨がぱらついていて、少し憂鬱です。木曽川が近づいてきたところでコンビニに入り、ビニール傘を買いました。コンビニの駐車場で荷物を確認して気がつきました。「着替えのパンツが無い」

ズボンの下は着替えの手間を省くためにビブショーツ。外は雨。ずぶ濡れになるのは確定なのに着替えのパンツが無い。着替えを持たないシクロクロッサーは幸せになれません。さらに荷物を弄ると心拍計がありません。靴下だけ余分に3足も入っています。準備不足にほどがあります。気を取り直して6時45分には会場入りして、受付を待ちました。小雨がぱらついています。

朝食は、固形食をとりません。味の素のアミノバイタルゼリー2個とスポーツドリンク1リットルをちびちび摂取します。さらに水を補給するとこの後決まって便通があるので、胃に固形物を溜めず、空腹感も無い状態がキープできます。今回もうまくいきました。

 

◼︎朝の試走

今回、タイヤはIRC SERAC CX EDGE。センターヤスリ目のハードパック向けのタイヤです。試走を始めてすぐにタイヤチョイスが失敗だった事に気がつきました。

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今シーズンの東海シクロクロス第1戦は、東海地方の自転車競技者にとっては聖地とも言える「平田リバーサイドプラザ」。昨シーズンは台風、昨々シーズンは積雪で中止になったこの会場は、芝生に隠れた凸凹が大変バンピーで、かつ水分を含むと猛烈にスリッピーな路面に変化していくのです。凸凹を走ると衝撃が激しく、必要以上に増大した上腕二頭筋がブルブル震え猛烈な疲労感です。さらに、朝の小雨で泥が浮き始めていた路面は路面抵抗が低下し猛烈に滑りやすくなっていました。体重が重い私は、空気圧を1.9に設定しました。周りでは1.5気圧とか話しているのが聞こえますが、そんな低圧だと私の場合はタイヤが外れます。チューブラータイヤが使ってみたい…

でも実際どこまで空気圧を下げられるのかしっかり検証したことはないですね。これは実験が必要かな。

 

◼︎ウォーミングアップ

朝の試走は時間をフルに使って路面を確認しましたが、全然うまく乗れる気配がありません。自分のタイヤチョイスのミスとテクニック不足を痛感しました。公園で8の字走行の練習をしても、レーシングスピードで追い込まないとタイヤの限界がわからないのです。

試走時間が終わって、CL3、U15のレースが始まりました。私が出走するC3まで随分時間があります。とりあえず応援に集中する事にしました。応援の合間に激しい雨が降ってきます。体を冷やさないように適宜車に退散、10:30頃からウォーミングアップに備えてアロマオイルを脚に擦り込みました。

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すっかりお気に入りのイナーメのCXオイルです。たっぷり使いたいので今シーズンは100mlを注文しました。脹脛、太腿、尻、背中にたっぷり塗り込みます。香りがとても良い。車の中がフローラルな香りでいっぱいになります。

ローラー台アップの前後に、今回は味の素の「アミノバイタルショット」を食べてみました。

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昨シーズンは東海シクロクロスではおなじみの「アスリチューン」を食べていましたが、今回は入手性が良いものにしてみました。結論なかなか調子良かったです。

 

◼︎レース本番

降ったり止んだりの変わりやすい天候。C3のレース前から、また雨足が激しくなってきました。体を冷やさないように気をつけていたのですが、ローラー台アップの効果はあり、体は十分あったまっています。今回防寒具としてユニクロのウインンドブレーカーを使ったのですが、中々調子がいい。薄手で撥水ですし。

補給もうまくいっているようで、空腹感は全くなく、鼻っ柱に血が集まる感覚があります。血糖値もしっかり高まっている気配です。昨シーズン後半でC3に昇格した私のボディNo.は25で4列目。前に並ぶ選手は層が厚く、さらに第1コーナーに目を向けると土が浮いています。

 

ビビリが入りました。

スタート直後に前走者に絡んで落車、第1コーナーをオーバースピードで侵入して落車のイメージが頭に浮かびます。本当に久しぶりのシクロクロスに恐怖を覚えました。号砲から一斉スタート。C3は勝ち上がってきた選手ばかりだけに、スタートミスはほとんどなく、集団でホームストレートを進みます。「ここで落車したら…」密集度に恐れをなした私は、ズルズル後ろに下がってしまいます。おそらく最後尾で第1コーナーに侵入しました。

 

平田リバーサイドプラザのコースは、芝生に隠れた微妙な凸凹がライダーを消耗させるなかなかハードなコースです。第1コーナー進入後から激しく体が揺さぶられます。第2コーナーに入ると前後輪とも滑り出し、私のテクニックでは制御不能になってしまいました。前後に隊列が長く伸び、後続集団から脱出できなくなっていきます。直線に入ると踏めるのですが、コーナーに進入する度に前後輪が滑り、その度に体が反応して、歩くより遅いスピードでコーナーを曲がります。まるで止まっているかのようです。時が止まっているのではない。俺が止まっているんだ。

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Photo by Kikuzo ライバルの庄司店長が後ろに迫る。

 

さらに平田リバーサイドプラザの鬼門であるコース中央部の舗装路。猛烈に砂利が浮いており、どこで滑るのか全くわかりません。本当に「コワイ!」と叫びながら走りました。タイヤには全く接地感がありません。氷の上をスニーカーで歩いている感覚です。この間に一度抜いた選手からもズバズバ抜かれます。長く伸びた隊列では、後ろに下がると私の走力では全く前に出れません。少なくともスタートダッシュは決めて、前の方に出ておくべきでした。

 

雨は降っていますが気温は高く、全く寒くありません。脚も疲労感はなく、しっかり動きます。しかし踏み込むと後輪が滑り、トラクションが全くかからず、ブレーキをかけると前輪が滑ります。滑る度に体が硬直し、もうなんというかてんでダメな状態になってしまいました。

 

追い上げてきたM2の選手に抜かされ始めたところで前輪が滑り左側に落車。「マジかよ!」と言いながら避けてくれたM2の選手に感謝です。ホント申し訳ない。

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見事に擦りむきました。

結局その後もペースを上げられず、ゴールスプリントだけ頑張ってゴール。全くパッとしないレースになってしまいました。走り終わってみると背中と腰は痛いけど脚が全く疲れていません。喉の奥に血の味もしない。高まってきた己のパワーを全く出しきれないモヤモヤしたレースになってしまいました。

 

◼︎レース後

着替えのパンツを忘れてきた事を思い出しました。持ってきていたフェイスタオルを越中褌的に股に挟んでパンツ代わりに。歩くと股間がそよぐ粋な爽快感。ダメな大人感が自分を苛みます。

レース後は定番のBUCYO COFFEEで昼食です。トマトクリームパスタはアップデートされ、標準でウインナーが添付されました。脚を使い切っていなくても飯は美味い。

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雨に濡れた身体にBUCYO COFFEEの愛が沁みます。

今回は妻子を置いてレースに来ていたので、自分のレースが終わったら早々に帰宅する予定だったのですが、結局全部のレースを観戦してしまいました。全てのレースの展開が面白く、自分のミスが何だったのか考えさせられました。次のレースにこの反省を活かしたいです。

 

帰宅後は晩御飯に舞茸をたっぷり入れた豚コマの生姜焼きを作りました。

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レースのモヤモヤをフライパンにぶつけて気持ちを落ち着ける作戦です。美味しくできました。

 

◼︎リザルト

カテゴリ:C3

順位:34/38位(89%)

タイム:28:03(+2:57)

 

◼︎まとめ

・タイヤチョイスは完全に失敗。ノブが高いタイヤもあらかじめ用意しておくべきだった。ホイールセットとしての用意がベスト。

・レーシングスピードでのコーナー進入の感覚が無くなっている。回数を重ねるしかない。

・脚は疲れなかったことから 、走力は上がっている。走力を路面に伝えるテクニックが必要。

・着替えのパンツを忘れるな。

 

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Photo by Youkan_0045 脚は育ってきている。

私にとってもはやライフワークとなってきたシクロクロス

今シーズンは諸所の事情から東海シクロクロスのみに絞っていますが、今シーズンも何らかの成果を出したい。まだ始まったばかりなので、ここで腐らず次の各務原アウトドアフィールドにつなげたいと思います。

【書評】獣の奏者 著:上橋菜穂子

個人的な理由で、最近長い新幹線の旅をしました。

旅のお供は、Amazonプライム会員なら格安で買えるKindle Fire HD 8です。電子書籍である Kindle本を読むのには正直重たく、今回長時間使ってみて、7インチ版が欲しくなってきました。まず読んだのが最新のハヤカワSF短編賞を受賞した「天駆せよ法勝寺」です。「佛理学」で宇宙を駆ける九重塔を描いた「佛教スペースオペラ」というハンパない内容で、万人にはオススメできないが、刺さる人には絶対刺さる素晴らしい作品でした。

…話がそれすぎました。

 

今回の本題は、「天駆せよ法勝寺」を読んだあとに読み始めた、和製ファンタジーの傑作と誉れ高い「獣の奏者」です。

獣の奏者 1闘蛇編 (講談社文庫)

獣の奏者 1闘蛇編 (講談社文庫)

 
獣の奏者 2王獣編 (講談社文庫)

獣の奏者 2王獣編 (講談社文庫)

 
獣の奏者 3探求編 (講談社文庫)

獣の奏者 3探求編 (講談社文庫)

 
獣の奏者 4完結編 (講談社文庫)

獣の奏者 4完結編 (講談社文庫)

 
獣の奏者 外伝 刹那 (講談社文庫)

獣の奏者 外伝 刹那 (講談社文庫)

 

 

外伝まで含めて計5冊。3日かけてまさに貪るように読みました。間違いなく傑作と言えましょう。ジャンルとしてはファンタジー小説に属すると思うのですが、ファンタジー小説でここまでハマったのは、25年近く前、広井王子が書いた「蜃気楼帝国」以来でしょうか。読んだのは中学生の頃なので、もはや手に入らないでしょうけど・・・

 


さて、「獣の奏者」は講談社青い鳥文庫でも出版されていることから、ある程度児童文学の要素を持っているのかと思いきや、しっかりした読解力を求める全年齢向けでした。過酷な人生を背負った主人公エリン(名の由来は作中では山リンゴの意)の少女時代からその生涯を描く大河ドラマです。

 

物語のキーとなるのが「闘蛇」と「王獣」という強い力を持った獣です。人にはなつかず、強大な力を誇る「獣」。犬笛のような超音波を発生する「音無し笛」でしか人はそれを御することはできません。しかし、同じく過酷な運命を背負い、若くして亡くなったエリンの母は、その獣を自在に操る術を持っていました。娘を守るために「大罪」とされるその術を使った母の影響で、エリンはどんどん過酷な運命に飲み込まれて行きます。

 

注目したいのが、ストーリーの面白さもあるのですが、物語の主要な謎である獣の正体に挑む主人公エリンのアプローチが、大変「科学的」であることです。あとがきからも伺えましたが、間違いなく相当綿密な取材に基づく描写で、エンジニア目線でも納得がいくところです。

 

予定では2巻で終了だったそうですが、読者からの強いプッシュで4巻まで書かれ、さらに外伝が出版されたとのことですが、世界観の完成度が高く、全く破綻を感じさせないストーリーでした。よく、優れた作品はキャラクターが自然に動き出し、物語を紡ぐと作家は言いますが、まさにそんな作品なのだと感じます。

 

読んだ人相手にはいくらでも語りあえそうな奮を覚えましたが、ネタバレはしたくないのでぜひ気になった方には読んでいただきたい。本作はKindle版で購入しましたが、書籍でも購入してリビングの本棚に置く事が決まりました。おそらく読むたびに発見があるでしょう。

 

上橋菜穂子先生の長編小説では、「鹿の王」というこちらも名作の誉れ高い作品が控えています。これからすぐにでも読みたい作品がすでに控えているのは幸せです。SF小説ばかり読んでいる私でしたが、結局面白ければジャンルは問わないということがよく分かりました。さらに読む範囲を広げてみたいと思う今日この頃です。

 

 

【自転車実験室】KONA HULA 24インチ 2018を10速化した話

私は、この秋はドロッパーポストを買おうと思っていたんです。MTBに本格的に乗り始めるとほしくなるのがサドル高を自在に変えられるドロッパーポスト。また来年になりました。

 

個人的に微力ながらお手伝いさせていただいている「INABU BASE PROJECT」。愛知県豊田市の稲武地区で山を切り開き、MTB用のトレイルを開拓して、将来的に有料のMTBツアーに繋げようとする試みです。

open-inabu.main.jp

 

その一環として先日、2018年の8月末に子供向けのイベントが開催されました。私はスタッフとして妻子を連れ参加してきました。

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結果は上々で、妻子共に大いに楽しんで貰えて、イベントとしては成功だったと感じています。ですがここで前々から気になっていた問題が浮上してきました。

「息子の走りがアグレッシブ過ぎて、チェーン落ちが激しい」という問題です。

 

息子の自転車はKONA HULA 24" の2018年モデルで、オフロード寄りの子供向けクロスバイクです。街乗りやちょっとしたダートを走るぶんには何も不満が無いのですが、トレイルで跳ね続けると、頻繁にスプロケットのインナー側にチェーンが落ちてしまう問題が浮上してきました。KONA HULA 24" の2018年モデルの変速機は、Shimanoの7速グリップシフト、スプロケットがボスフリーです。

 

浮上した問題点は

・段差を越えた際のリアディレイラーの暴れが激しく、チェーン落ちしやすい。


KONA HULA 2018 チェーン暴れ初期状態

この通り暴れまくりです。

 チェーンが7速用で分厚く重いこと、RDのテンションが弱いため今にも外れそうな勢いでチェーンが暴れます。これはガチのトレイルでは外れることも納得です。

 

・インナー側の「皿」を取っているせいで、ボスフリーのスプロケットのインナー側にチェーン落ちした際に微妙に復帰しづらい。

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チェーンのアウタプレートが、スプロケット裏側のピンに干渉する位置に落ちているのがわかるでしょうか。

新車についているインナー側の「皿」ですが、自分で自転車をいじるようになってからは全部はずしています。チェーンがインナー側に落ちても復帰はそんなに難しくなかったので。ですが、ボスフリーのこのスプロケットの場合、「皿」がないと、チェーンが落ちたときにこの隙間にチェーンが入ってしまい、知恵の輪的に取り出せなくなってしまうのです。かなり頑張らないと取れないし、手も汚れまくるしであんまり嬉しくありません。

 

・ボスフリー用の工具を持っていない。(使用頻度低過ぎ、というかほぼ無い)

 

しかし、ここは息子からの訴えで初めて理解したのですが、

・グリップシフトだと、登坂中に不用意にシフトアップしてしまい登り切れない。

という発見です。

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オフロードの登りでハンドルをしっかり握りながら漕いでいると、グリップシフトに触れてしまい、不用意にシフトアップ、登り切れないという現象が発生しているようでした。シフトを避けてグリップを握ると、ブレーキに触り辛い、バランスが取りにくいとの事。

 

今後も息子に思うがままトレイルを走ってほしい私としては解決しなければならない問題です。

結論としては、

「スタビライザー付きのリアディレイラーを導入しチェーン落ち率を低下させると共に、ラピッドファイヤー化で不用意な変速を防ぐ」というものです。ここから、「シマノの10速MTBドライブトレインの導入」という考えに至りました。我が家の主な自転車のドライブトレインは、シマノ10速もしくはシングルスピードなので、妥当な選択肢でした。また、11速にするとチェーンが薄くなるため、初期状態のチェーンリングにチェーンが合わなくなる可能性があります。まだ11速に手は出せない。

 

■用意したパーツ

 ・変速機:RD-M6000-GS

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チェーン暴れを低下させるため、スタビライザーつきのリアディレイラーです。パーツとしては高価な部類なので、一番安いDEOREグレードです。こう見るとかっこええやん。

 

スプロケット:CS-HG500 10S 11-34T

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もともとのスプロケットは14-34Tが実装されていました。今回の改造でトップ側のギア比が高くなり、ロー側がきめ細かくなる感じです。

グラフ化するとこんな感じ。ギア比の上昇曲線が美しいですね。

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・チェーン:CN-6701 10S

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 5,000km弱使った私のシクロクロスバイクのチェーンを洗って流用しました。ロード用ULTEGRAグレードです。WAKO'Sのパーツディグリーザーでしっかり洗ってピカピカ。最近チェーン値上がりしたので流用もバカになりません。切れたら新品にします。

自分の分は56cycleでデッドストックになっていたCN-6701が用意してあります。だれも10速のチェーンを買わないので、旧価格で売ってもらえました。

 

・リアハブ:FH-T610 36H

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もともとがボスフリーのホイールなので、そのままではカセットスプロケットが実装できません。24インチのMTB用ホイールを新たに入手するのも難易度が高いので、リムを流用してホイールを組み直すことにしました。もともとのハブが36Hなので36Hです。

 

・ブレーキレバー:BL-T611

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正直これは変えなくても良かったのですが、シマノVブレーキレバーはシフターをレバーにマウントできる「Ispec-B」対応です。見た目がスッキリするし、もともとのハンドルバーが黒なので、ハンドル回りが黒でまとまってかっこええやろ、という考えです。完全に自己満足の世界。

 

・シフター: SL-M670-B-I 右のみ

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ブレーキレバーを「Ispec-B」対応にしたので、「Ispec-B」対応の10速レバーは自然とコレになりました。DEOREよりも気持ちレバーの引きが軽いことを期待したい。

 

・グリップ:WTBの¥1,400のやつ

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安価でちょうどいい、みんなの味方WTB。グリップシフトではなくなるので、右側のグリップが合わなくなるので、新たにグリップが必要です。イボイボがあるタイプは素手だと痛くなる時があるので、ツルっとしたコレにしました。

 

かくして私のドロッパーポスト代は息子のドライブトレイン代となりました。自転車をいじるのは楽しいですし、後悔はしていない。

 

■車輪組み

今回リアホイールは組み直しです。久々に車輪組のチャンスがやって来ました。

もともと使われていた正体不明の24インチリムを使用するので、ERD(有効リム径)が不明です。スポークとニップルを使ってERDを測ります。

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元々のホイールをバラしてリムを観察すると、デカい切削屑が2個も取れました。もう一個あったのですが奥まったところにあり取れません。今回は諦めました。

 

リムがバラせたところでERDを求めるため各部を採寸します。

以下が私のERDの求め方です。

1.リムの外径を測る。・・・ A

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 もともとのホイールをばらしてリム単体にし、メジャーで直径を測ります。3回程度測って平均値を出します。リムの繋ぎ目や、スポーク穴を目安に測ると測りやすいです。

今回520mmでした。

 

2.リム外周からニップル先端までの長さを測る。・・・ B

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 仮のニップルとスポークをつけ、リム外周からニップルの先端までを測ります。スポークをつけておくとニップルを引っ張って測れるので測りやすいです。

25.5mmでした。

 

3.ニップルの長さを測る。・・・ C

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 ニップル先端からニップルのドライバー溝までの長さを測ります。スポークはニップル内のネジのかかりしろまであればよいので、溝のツラで測ります。

11.5mmでした。

 

4.計算する。

ここまで測定した値で、以下の式にすると計算できます。

 

 ERD = A - 2 × ( B - C )

 

ざっくり絵にするとこんな感じです。

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B - C を2倍しているのはリムの反対側も計算に入れる必要があるからです。

工夫してERD計測工具を自作している方もいるようですが、しばらく次のホイールが組めなさそうなのでまた次回にしたいと思います。

 

ERDが計算できたら、Excelで作ってある計算ツールでスポーク長を計算です、と言いたいところなのですが、今回使用するハブであるFH-T610のフランジ↔︎センター間の寸法が製品ページにありません。シマノの技術資料をたぐります。

 

2018-2019 SHIMANO Product Information Web

 

資料によると、フランジ間距離(Flange distance)が59.2mm、オフセット(Offset)が7.8mmとあります。この数字から、フランジ間距離を2で割って、ドライブ側はオフセット分を引き、反ドライブ側にはオフセット分を足すとフランジ↔︎センター間の寸法が出せます。

 

結果、

ドライブ側:21.8mm

反ドライブ側:37.4mm

となりました。

 

念のため実寸もします。

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エンドにアルミの治具を突き当て、ノギスで測ります。アルミの治具は、以前服部製作所にお願いして作ってもらいました。クイックレバーをしっかり締めると治具が固定できるので、安定して採寸ができます。この時、スポーク穴から採寸すると、シマノの技術資料とほぼ同じ寸法になりました。資料の値で計算して問題なさそうです。

 

以前にExcelで作成した計算シートにこれまでの採寸結果を入力して計算します。

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ドライブ側4本組、反ドライブ側6本組のヨンロク組でいくことにしました。スポーク長が計算できたらおなじみのCirclesでスポークを切ってもらいます。スポークは安価にホシの#14です。

 

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組めました。フレームカラーが緑なのでニップルもアルミの緑にしました。 

今回組み立ててみて、反ドライブ側のスポークがだいぶ長いことがわかりました。以前から感じていたのですが、首折れスポークの場合、首の部分が馴染んでくると、予定よりスポーク長が伸びてしまう印象です。このあたりの伸びを補正値として今後は計算に組み込んでいく必要がありそうです。

 

■自転車への組み付け

ホイールが組めたらあとはちゃっちゃと自転車に組み付けていくだけです。

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組めました。

側面から見たら、写真が暗いと変化がわからないくらい見た目では地味な変化です。スプロケットが目立つかな。

 

ハンドル部はしっかり変わりました。

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シフターがレバーの下に隠れるので見た目がスッキリです。

 

ライダー側から見るとこんなかんじ。

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 黒で統一されて、引き締まった印象です。ステアリングコラムのトップキャップは、2018年の白州の森バイクロア4でファミリークラス3位入賞の賞品です。スペシャリティある。

 

気にしていたチェーン暴れですが、


KONA HULA 2018 RD変更後

変更前と比べるとリアディレーラがスタビライザーのおかげで暴れないので、全然違います。チェーンリングは初期についていたものですが、現時点では外れる気配はなさそうでした。このまま行けそうです。変速についても特に問題ない印象です。

 

息子に実走で変速の調子を確認してもらいました。早速近所の公園の階段を乗車で下って、チェーン暴れが少ないことに満足してもらえたようです。シフトダウン時に親指をだいぶ押し込まないといけないことに少し戸惑ったようですが、全体としては問題なく変速できるとのこと。シフターの取り付け位置も微調整が効くので、ある程度の握力がついてきたら子供用自転車でもグリップシフトよりラピッドファイヤーのほうが良さそうです。

 

地獄の猛暑もやっと落ち着いてきたし、あとは思う存分走ってもらうだけですね。

 

【書評】夜は短し歩けよ乙女 著:森見登美彦

小説を読む人であれば、「食わず嫌い」ってあると思います。

私にとっては、森見登美彦作がまさにそれでした。

 

ベストセラー作品のなかでも「夜は短し歩けよ乙女」は、なんというかなぜか手が出ない作品だったのでした。

夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)

夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)

 

最近森見登美彦原作のアニメ映画「ペンギンハイウェイ」のCMが見られるようになってきて、そのSFっぽい雰囲気に私としては食指が動く感じでした。最近小説を読む時間も作れるようになってきて、私としては「ペンギンハイウェイ」を読む前に代表作とも言われる「夜は短し歩けよ乙女」を読んでおくしかないんではないか、と思い読んでみました。

 

読みはじめてすぐに感じたのは、「うる星やつら2 ビューティフルドリーマー」感でした。原作の高橋留美子をして 「一番きらい」と言わしめた押井守監督作品です。

 

森見登美彦京都大学農学部出身で、その京都大学周辺を舞台にした甘酸っぱいラブストーリーの本作ですが、夢現のなかで過ぎ去るファンタジー感はまさに「ビューティフルドリーマー」でした。なんというか著者の大学時代の風景、もしくは思考回路を反映したのかと邪推してしまう本文ですが、対してヒロインの思考回路の現実感の無さ!妄想膨らむ青春真っ只中のオタク大学生の理想を具現化したような現実感のないヒロインですが、読み進めると「まぁええか」という気持ちになってきました。もはや突っ込むのも無粋というもの、という気配です。

このヒロインに対して女性読者はどのような印象を抱くのでしょうか。

 

ストーリーは徹底したご都合主義で、京都を舞台にファンタジーな世界が広がります

。登場人物は面妖な人物ばかりですが、実際「京都ならしゃあないか」と思わせる妙なリアリティを感じるキャラ立ちした人物ばっかりです。別に私は京都には縁もゆかりもなく、完全に勝手な思い込みです。

 

最後まで読んで、赤面間違いなしのハッピーエンドで終わるのですが、ハッピーエンドの作りよりも、作中のセリフの元ネタや、伏線回収について考えさせてしまうところがかつてひねくれた男子学生だった自分を抉ります。私は作中の「私」のような知的レベルでは生きていませんでしたが・・・

 

文庫版の「あとがきにかえて」の羽海野チカ先生のイラストがしっくり来ていて、山下和美先生でもしっくり来る気がしました。読み終えてから著者のWikipedia記事を読んでみると、押井守作品に特別な思いがあるようです。私が感じた「ビューティフルドリーマー」感は間違いなかったようです。

 

ベストセラー作品にまんまとやられた気がして悔しいのですが、「まぁこれは流行るんちゃうかな」とうそぶきつつ、すでに購入済みの「ペンギンハイウェイ」に読み進みたいと思います。

【書評】巨神計画・巨神覚醒 著:シルヴァン・ヌーベル

乱暴かも知れませんが、古より日本ではSFと言うと、もっとも一般的に知られるのが巨大な人型ロボットが主題のアニメと言えるかと思います。

しかし、人型の巨大なロボットに人が乗り込んで操縦し、戦闘に使うというのはどう考えても無理があります。巨大な質量はそれだけでコントロールが困難な代物ですし、質量が巨大だということは、少し動くだけでも巨大な仕事量となり、それを実現するには莫大なエネルギーが必要で、そのエネルギーをどこから調達するのかという問題もありますし、第一戦闘に使ったら確実に壊れるワケで、達成できる成果と製造コストと補修費が釣り合わなすぎです。結局ミノフスキー粒子が散布されても現実では人力の白兵戦になる気配が濃厚です。

 

でも、人々は巨大ロボットによる戦闘が大好きです。

gigazine.net

私も大好きです。

 

しばらく色々あって大好きなSF小説を読む機会がなかったのですが、やっと私生活が落ち着いて久々にSF小説を読む機会がやって来ました。今回読んだのは職場付近の本屋で面出しになっており、前から気になっていた「巨神計画」と「巨神覚醒」の各上下巻4冊です。

 

巨神計画 上 〈巨神計画〉シリーズ (創元SF文庫)

巨神計画 上 〈巨神計画〉シリーズ (創元SF文庫)

 
巨神計画〈下〉 (創元SF文庫)

巨神計画〈下〉 (創元SF文庫)

 

 

巨神覚醒 上 〈巨神計画〉シリーズ (創元SF文庫)

巨神覚醒 上 〈巨神計画〉シリーズ (創元SF文庫)

 
巨神覚醒 下 〈巨神計画〉シリーズ (創元SF文庫)

巨神覚醒 下 〈巨神計画〉シリーズ (創元SF文庫)

 

 

 発掘された正体不明のテクノロジーで製造された約6000年前の巨大ロボットをめぐるお話です。3部作として構想されており、来春日本語版完結編が販売される予定です。今から超楽しみ。日本の巨大ロボットアニメに知見のある方であれば、読めば著者が猛烈に日本のロボットアニメ愛好家であり、かつひねくれた性格であることがお分かりいただけると思います。

 

特徴的な文体で、録音記録を文字起こししたような形でストーリーは進みます。巨大戦闘ロボットが発掘され運用されるまでの流れ、そしてその戦い、バックストーリーまで、あんまり細かい描写とは言えないまでも読み手を興奮させる内容で、ぶっちゃけ大満足です。特に「インタビューワー」の存在が読者を刺激すると感じました。すっかりハマってしまい4冊買って3日で読んでしまいました。ですが、2部4冊の中でロボット同士の戦闘シーンはごくわずかで、絵面を想像すると大変地味なものです。でも個人的には納得のいく戦闘シーンでした。

 

第2部である「巨神覚醒」では、主要な登場人物の名前の由来が明らかにされるのですが、40歳付近のアニオタには「そこまで直球でいいの!?」と感じてしまいます。ガチのロボットアニメ愛好家の方であれば、モトネタはどこかを考えながら読んでもよいかも知れません。個人的には「ぼくらの」分も感じました。さらに結構大急ぎで伏線回収しているので、読者としてはそれなりのカタルシスは得られると思います。

 

細かい設定が大好きなSFオタからは雑な設定と言われそうですが、

             /)

           ///)
          /,.=゙''"/
   /     i f ,.r='"-‐'つ____   こまけぇこたぁいいんだよ!!
  /      /   _,.-‐'~/⌒  ⌒\
    /   ,i   ,二ニ⊃( ●). (●)\
   /    ノ    il゙フ::::::⌒(__人__)⌒::::: \
      ,イ「ト、  ,!,!|     |r┬-|     |
     / iトヾヽ_/ィ"\      `ー'´     /

 

な感じがエンターテイメントとしてはちょうどいい感じです。大変楽しめました。

 

問題点としては、SF小説はあまり売れないので単価が高くなってしまうということです。文庫版で買った私には4冊で4000円超。でも、何度でも読み返せる事を考えたら結構お得な気もしています。

 

久々に読んだSF小説がエンターテイメント色が強いもので良かったです。来春発売の完結編が今から楽しみです。

【雑記】マインクラフト(Windows10版)にMakeCode for Minecraftを導入した話

昨年、息子とマインクラフトでマルチプレイをするためにMac Mini(Late2012)にWindows10を導入し、Windows10版とiOS版でマルチプレイを楽しんでいるのですが、旧Mac版でできた「ComputerCraftEdu」が使えなくなり、プログラミングで遊ぶ事が出来なくなったのが不満でした。OSを切り替えればいいのですが、デュアルブート環境ではイマイチ面倒です。

 

そんな中、2017年の10月にMicrosoftから公式プログラミングツールである「MakeCode for Minecraft」がリリースされていた事を知り、早速インストールしてみました。

 

minecraft.makecode.com

 

結論から言うと昨年遊んでみた「ComputerCraftEdu」よりもプログラミングしやすく、かつ高度なプログラミングが可能になっており、公式の本気を感じます。ですが、日本のマインクラフターの間ではイマイチ話題ではないらしく、Webで検索してもプレスリリースか英語の情報しかなく、個人のブログなどではあんまり紹介されていません。公式からマトモな日本語サイトが公開されていないせいでしょうか。

と言うわけでこのGWの連休で遊んでみた結果をまとめてみたいと思います。

 

 

◼︎MakeCode for Minecraftとは?

昨年は気づいていなかったのですが、「窓の杜」で以下の通りプレスリリースがあったようです。

forest.watch.impress.co.jp


概要を図示するとこんな感じです。

 

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MakeCode for Minecraft」で作ったプログラムを、「Code Connection」が橋渡しして「マインクラフト」で動作させるという仕組みになっています。後述しますが、「Code Connection」で橋渡し出来るプログラミングツールなら、他の言語も使えるようです。「MakeCode for Minecraft」はJAVA Scriptで組まれており、JAVA Scriptが使える方なら直接記述も可能です。

 

◼︎インストール

Minecraft(Windows10版)がインストールされたPCで、以下のサイトにアクセスして「MakeCode for Minecraft」をダウンロードします。

 

minecraft.makecode.com

 

サイト中段にある「Download Code Connection」をクリックします。

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 写真1:ダウンロードボタン

 

ブラウザが「Edge」の場合は以下のダイアログが表示されるので、「実行」をクリックしてインストール開始です。

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写真2:インストールの実行

 

後はWindowsアプリケーション定番のインストールの流れです。

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写真3:おなじみのインストールダイアログ

 

そのままインストールが終わるとデスクトップに以下のアイコンが表示されます。

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写真4:いかにもマインクラフトなアイコン

 

これで準備完了です。

 

◼︎マインクラフト(Windows10版)と連携する

マインクラフトを起動してから「Code Connection」を起動すると、以下のようにメッセージが出ます。書類アイコンのボタンを押すと、コマンドがクリップポードにコピーされます。

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写真5:仮想サーバへのアクセスコマンドをコピーする

 

Minecraft Education Edition」と書いてありますが、普通のマインクラフトWindows10版で問題ありません。

 

チートONのクリエイティブモードでワールドを作ります。常に昼間、天候変化なしのオプションは付けておいた方がウザくないでしょう。チャットウィンドウを開いて先ほどコピーしたコマンドを貼り付けて、Enterキーを押すか右側の実行ボタンを押します。

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写真6:チャットウィンドウへコマンドを貼り付けて実行

 

「サーバーへの接続を確率しました」のメッセージが出ると準備完了です。

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写真7:サーバへ接続を確立

 

接続が完了すると、「Code Connection」の画面が切り替わります。

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写真8:MakeCode以外のプログラミング学習ツールが使えるようである。

 

ブロック積み上げ型のプログラミング学習ツール「Scratch」も使えるようです。すでに「Scratch」で遊んでいる場合はそちらでも良さそうですね。今回はエントリの表題通り「MakeCode」を使います。

 

先ほどの画面で「MakeCode」をクリックすると、「MakeCode」のホームが開きます。

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写真9:「MakeCode」のホーム画面。すでに何件かプロジェクトを作った後です。

 

ここで写真9の「新しいプロジェクト」をクリックすると、新しくプログラムが作成できます。 

 

◼︎プログラミングの基本

実際のプログラミングは、公式サイトにチュートリアルがあるので、それで試すとよく分かると思います。ここからは自分で実際に試してみた結果を示します。 

 

「新しいプロジェクト」をクリックすると、以下のような写真10の状態に切り替わります。写真10は、画面左側の「プレイヤー」という青色のボタンをクリックした状態です。

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写真10:左側のボタンでプログラムのブロックが各種選べる

 

赤枠で囲った大カッコのようなものが、プログラムの一括りになります。

ここからはとりあえず、「ComputerCraftEdu」でいうところの「タートル」にあたる「エージェント」の姿を拝みたいので、「エージェントを自分のところに移動させる」を実際に作ってみます。

 

写真10の赤枠で囲った青い大カッコをクリックすると、プログラムを記述する領域に反映されます。写真11の状態では、マインクラフト上でチャットウィンドウにコマンド "jump" を入力した時に、カッコ内が実行されるプログラムになります。

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 写真11:大カッコのようなものがプログラムの一括り

 

"jump" をクリックすると選択状態になり、文字列を書き換える事ができます。

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写真12:文字列を選択した状態

 

"come" に書き換えました。

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 写真13:文字列を書き換え

 

今度は、左側の「エージェント」ボタンをクリックし、「エージェントを自分の位置にもどす」と書かれた短冊をクリックします。

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写真14:エージェントに対する命令を選ぶ

 

プログラムを記述する領域に、「エージェントを自分の位置にもどす」の短冊が網掛け状態で追加されました。

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写真15:プログラム記述領域に命令がコピーされる

 

ドラッグして、「チャットコマンド "come" を入力した時」の大カッコ内に短冊を移動します。

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写真16:ドラッグして組み込み

 

収まりました。コレでプログラミングは完了です。

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写真17:プログラムの完成

 

では実際にチャットウィンドウを開いて、コマンド "come" を入力します。

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写真18:作ったプログラムを実行してみる

 

 自分の足元に、「エージェント」がやってきました。写真19では一歩引いてスクリーンショットを撮っていますが、実際には自分と同じ座標に来ます。この「エージェント」を使って自分の代わりに建築をしたり、畑を作ったり色々遊べるのですが、それは別の機会にします。

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写真19:呼び寄せた「エージェント」

 

◼︎遊んでみた

公式サイトにはサンプルプログラムが示されており、それを試しに遊んでみることにしました。写真20のプログラムは、「Chicken Rain」と名付けられた「ニワトリを、自分の上空100の座標に100羽スポーン(発生)させる」というプログラムです。写真9の公式サイトトップ画像にそのプログラムが表示されているので採用しました。他にもいろんな動物がスポーンできるのですが、飛べない動物は落下ダメージで◯んでしまいまうのでニワトリです。 

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写真20:「ループ」と「生き物」を組み合わせて作る

 

作ったプログラムを実行すると、しばらくすると空からニワトリが降ってきます。

何とも異様な光景で笑えます。

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写真21:「親方!!空からニワトリが!!」

 

息子から、「1万回繰り返しにしたら、ニワトリは1万羽スポーンするの!?」と注文が入ったので実際に試すことにしました。実行結果は写真23の通り、100羽の時より圧倒的なニワトリが降ってきます。 

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写真23:一万羽のニワトリ

 

引きで撮影するとその異様さが更にはっきりわかります。息子は爆笑して腹が捩れそうな勢いでした。

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写真24:ニワトリタワー状態

 

爆笑している息子と同時に、ニワトリ1万羽はMac Mini(Late2012)には負荷が高すぎるらしく、CPUファンが激しい音を立てて回り始めました。コレはあんまりよくない。せめてニワトリの動きを止めないと、と思い写真25のプログラムを作成しました。

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写真25:禁断のプログラムを作る

 

赤いブチの卵はニワトリです。それにしてもなぜこんなプログラムが実装できるように設計されているのでしょうか・・・

なんにせよ実行します。

 

実行前、辺り一面に広がるニワトリと、さらに降り続けるニワトリでエライコッチャな状態だったのですが、

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写真26:うわぁ

 

プログラムを実行するとあたり一面のニワトリは「コケーッ!」という断末魔と共に皆行動不能になり、大量の生のトリ肉と羽が残されました。まだ地上に降下しきっていないニワトリも生のトリ肉になり、地上に勢い良く落下してきます。

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写真27:「私残酷ですわよ」

 

このまま5分程度待てば生のトリ肉と羽はみんな自然消滅し、バニラ世界に平穏が訪れることでしょう。コンピューターはプログラミングしたとおりに動く、ということを息子に示すことができましたが、果たしてコレでよかったのかは疑問が残ります。

 

◼︎ちょっと遊んでみた感想

プログラミングの基礎があり、マインクラフトで遊んだことがある方であれば、「簡単で楽しい」と思います。プログラミング学習教材としても、マインクラフトが好きな子供であれば、日本語でプログラミングできることからかなりとっつきやすいのではないでしょうか。また、今回は書きませんでしたが、「MakeCode for Minecraft」で作成したプログラムは、JAVA Scriptに切り替える事ができ、逆にJAVA Scriptで記述すれば「MakeCode for Minecraft」に簡単に切り替えられます。アルゴリズムの基礎がある方であれば、JAVA Scriptがわからなくても簡単にプログラミングできるでしょう。逆にマインクラフト用のメソッドがわからなくても、JAVA Scriptで記述する際にはメソッドのオートコンプリート機能もありますし、学習教材として優れているのではないでしょうか。

 

マイクロソフトとしては、こういう遊びを提供することで将来のソフトウェアエンジニアを育てたいという狙いがあると思われますが、日本語チュートリアルが簡単に見つけられない現状では、日本ではあまり広がらない気がします。少しもったいないですね。

 

そして、子供がマインクラフトに熱中している技術職の親であれば、ぜひWindows10版の環境を子供に用意してあげて欲しいと個人的には思っています。息子と一緒に「どんなプログラムを作ろうか?」と考える時間は楽しくて、とても貴重な時間に感じています。