【書評】巨神計画・巨神覚醒 著:シルヴァン・ヌーベル
乱暴かも知れませんが、古より日本ではSFと言うと、もっとも一般的に知られるのが巨大な人型ロボットが主題のアニメと言えるかと思います。
しかし、人型の巨大なロボットに人が乗り込んで操縦し、戦闘に使うというのはどう考えても無理があります。巨大な質量はそれだけでコントロールが困難な代物ですし、質量が巨大だということは、少し動くだけでも巨大な仕事量となり、それを実現するには莫大なエネルギーが必要で、そのエネルギーをどこから調達するのかという問題もありますし、第一戦闘に使ったら確実に壊れるワケで、達成できる成果と製造コストと補修費が釣り合わなすぎです。結局ミノフスキー粒子が散布されても現実では人力の白兵戦になる気配が濃厚です。
でも、人々は巨大ロボットによる戦闘が大好きです。
私も大好きです。
しばらく色々あって大好きなSF小説を読む機会がなかったのですが、やっと私生活が落ち着いて久々にSF小説を読む機会がやって来ました。今回読んだのは職場付近の本屋で面出しになっており、前から気になっていた「巨神計画」と「巨神覚醒」の各上下巻4冊です。
発掘された正体不明のテクノロジーで製造された約6000年前の巨大ロボットをめぐるお話です。3部作として構想されており、来春日本語版完結編が販売される予定です。今から超楽しみ。日本の巨大ロボットアニメに知見のある方であれば、読めば著者が猛烈に日本のロボットアニメ愛好家であり、かつひねくれた性格であることがお分かりいただけると思います。
特徴的な文体で、録音記録を文字起こししたような形でストーリーは進みます。巨大戦闘ロボットが発掘され運用されるまでの流れ、そしてその戦い、バックストーリーまで、あんまり細かい描写とは言えないまでも読み手を興奮させる内容で、ぶっちゃけ大満足です。特に「インタビューワー」の存在が読者を刺激すると感じました。すっかりハマってしまい4冊買って3日で読んでしまいました。ですが、2部4冊の中でロボット同士の戦闘シーンはごくわずかで、絵面を想像すると大変地味なものです。でも個人的には納得のいく戦闘シーンでした。
第2部である「巨神覚醒」では、主要な登場人物の名前の由来が明らかにされるのですが、40歳付近のアニオタには「そこまで直球でいいの!?」と感じてしまいます。ガチのロボットアニメ愛好家の方であれば、モトネタはどこかを考えながら読んでもよいかも知れません。個人的には「ぼくらの」分も感じました。さらに結構大急ぎで伏線回収しているので、読者としてはそれなりのカタルシスは得られると思います。
細かい設定が大好きなSFオタからは雑な設定と言われそうですが、
/)
///)
/,.=゙''"/
/ i f ,.r='"-‐'つ____ こまけぇこたぁいいんだよ!!
/ / _,.-‐'~/⌒ ⌒\
/ ,i ,二ニ⊃( ●). (●)\
/ ノ il゙フ::::::⌒(__人__)⌒::::: \
,イ「ト、 ,!,!| |r┬-| |
/ iトヾヽ_/ィ"\ `ー'´ /
な感じがエンターテイメントとしてはちょうどいい感じです。大変楽しめました。
問題点としては、SF小説はあまり売れないので単価が高くなってしまうということです。文庫版で買った私には4冊で4000円超。でも、何度でも読み返せる事を考えたら結構お得な気もしています。
久々に読んだSF小説がエンターテイメント色が強いもので良かったです。来春発売の完結編が今から楽しみです。