【自転車実験室】KONA HULA 24インチ 2018を10速化した話
私は、この秋はドロッパーポストを買おうと思っていたんです。MTBに本格的に乗り始めるとほしくなるのがサドル高を自在に変えられるドロッパーポスト。また来年になりました。
個人的に微力ながらお手伝いさせていただいている「INABU BASE PROJECT」。愛知県豊田市の稲武地区で山を切り開き、MTB用のトレイルを開拓して、将来的に有料のMTBツアーに繋げようとする試みです。
その一環として先日、2018年の8月末に子供向けのイベントが開催されました。私はスタッフとして妻子を連れ参加してきました。
結果は上々で、妻子共に大いに楽しんで貰えて、イベントとしては成功だったと感じています。ですがここで前々から気になっていた問題が浮上してきました。
「息子の走りがアグレッシブ過ぎて、チェーン落ちが激しい」という問題です。
息子の自転車はKONA HULA 24" の2018年モデルで、オフロード寄りの子供向けクロスバイクです。街乗りやちょっとしたダートを走るぶんには何も不満が無いのですが、トレイルで跳ね続けると、頻繁にスプロケットのインナー側にチェーンが落ちてしまう問題が浮上してきました。KONA HULA 24" の2018年モデルの変速機は、Shimanoの7速グリップシフト、スプロケットがボスフリーです。
浮上した問題点は
・段差を越えた際のリアディレイラーの暴れが激しく、チェーン落ちしやすい。
この通り暴れまくりです。
チェーンが7速用で分厚く重いこと、RDのテンションが弱いため今にも外れそうな勢いでチェーンが暴れます。これはガチのトレイルでは外れることも納得です。
・インナー側の「皿」を取っているせいで、ボスフリーのスプロケットのインナー側にチェーン落ちした際に微妙に復帰しづらい。
チェーンのアウタプレートが、スプロケット裏側のピンに干渉する位置に落ちているのがわかるでしょうか。
新車についているインナー側の「皿」ですが、自分で自転車をいじるようになってからは全部はずしています。チェーンがインナー側に落ちても復帰はそんなに難しくなかったので。ですが、ボスフリーのこのスプロケットの場合、「皿」がないと、チェーンが落ちたときにこの隙間にチェーンが入ってしまい、知恵の輪的に取り出せなくなってしまうのです。かなり頑張らないと取れないし、手も汚れまくるしであんまり嬉しくありません。
・ボスフリー用の工具を持っていない。(使用頻度低過ぎ、というかほぼ無い)
しかし、ここは息子からの訴えで初めて理解したのですが、
・グリップシフトだと、登坂中に不用意にシフトアップしてしまい登り切れない。
という発見です。
オフロードの登りでハンドルをしっかり握りながら漕いでいると、グリップシフトに触れてしまい、不用意にシフトアップ、登り切れないという現象が発生しているようでした。シフトを避けてグリップを握ると、ブレーキに触り辛い、バランスが取りにくいとの事。
今後も息子に思うがままトレイルを走ってほしい私としては解決しなければならない問題です。
結論としては、
「スタビライザー付きのリアディレイラーを導入しチェーン落ち率を低下させると共に、ラピッドファイヤー化で不用意な変速を防ぐ」というものです。ここから、「シマノの10速MTBドライブトレインの導入」という考えに至りました。我が家の主な自転車のドライブトレインは、シマノ10速もしくはシングルスピードなので、妥当な選択肢でした。また、11速にするとチェーンが薄くなるため、初期状態のチェーンリングにチェーンが合わなくなる可能性があります。まだ11速に手は出せない。
■用意したパーツ
・変速機:RD-M6000-GS
チェーン暴れを低下させるため、スタビライザーつきのリアディレイラーです。パーツとしては高価な部類なので、一番安いDEOREグレードです。こう見るとかっこええやん。
・スプロケット:CS-HG500 10S 11-34T
もともとのスプロケットは14-34Tが実装されていました。今回の改造でトップ側のギア比が高くなり、ロー側がきめ細かくなる感じです。
グラフ化するとこんな感じ。ギア比の上昇曲線が美しいですね。
・チェーン:CN-6701 10S
5,000km弱使った私のシクロクロスバイクのチェーンを洗って流用しました。ロード用ULTEGRAグレードです。WAKO'Sのパーツディグリーザーでしっかり洗ってピカピカ。最近チェーン値上がりしたので流用もバカになりません。切れたら新品にします。
自分の分は56cycleでデッドストックになっていたCN-6701が用意してあります。だれも10速のチェーンを買わないので、旧価格で売ってもらえました。
・リアハブ:FH-T610 36H
もともとがボスフリーのホイールなので、そのままではカセットスプロケットが実装できません。24インチのMTB用ホイールを新たに入手するのも難易度が高いので、リムを流用してホイールを組み直すことにしました。もともとのハブが36Hなので36Hです。
・ブレーキレバー:BL-T611
正直これは変えなくても良かったのですが、シマノのVブレーキレバーはシフターをレバーにマウントできる「Ispec-B」対応です。見た目がスッキリするし、もともとのハンドルバーが黒なので、ハンドル回りが黒でまとまってかっこええやろ、という考えです。完全に自己満足の世界。
・シフター: SL-M670-B-I 右のみ
ブレーキレバーを「Ispec-B」対応にしたので、「Ispec-B」対応の10速レバーは自然とコレになりました。DEOREよりも気持ちレバーの引きが軽いことを期待したい。
・グリップ:WTBの¥1,400のやつ
安価でちょうどいい、みんなの味方WTB。グリップシフトではなくなるので、右側のグリップが合わなくなるので、新たにグリップが必要です。イボイボがあるタイプは素手だと痛くなる時があるので、ツルっとしたコレにしました。
かくして私のドロッパーポスト代は息子のドライブトレイン代となりました。自転車をいじるのは楽しいですし、後悔はしていない。
■車輪組み
今回リアホイールは組み直しです。久々に車輪組のチャンスがやって来ました。
もともと使われていた正体不明の24インチリムを使用するので、ERD(有効リム径)が不明です。スポークとニップルを使ってERDを測ります。
元々のホイールをバラしてリムを観察すると、デカい切削屑が2個も取れました。もう一個あったのですが奥まったところにあり取れません。今回は諦めました。
リムがバラせたところでERDを求めるため各部を採寸します。
以下が私のERDの求め方です。
1.リムの外径を測る。・・・ A
もともとのホイールをばらしてリム単体にし、メジャーで直径を測ります。3回程度測って平均値を出します。リムの繋ぎ目や、スポーク穴を目安に測ると測りやすいです。
今回520mmでした。
2.リム外周からニップル先端までの長さを測る。・・・ B
仮のニップルとスポークをつけ、リム外周からニップルの先端までを測ります。スポークをつけておくとニップルを引っ張って測れるので測りやすいです。
25.5mmでした。
3.ニップルの長さを測る。・・・ C
ニップル先端からニップルのドライバー溝までの長さを測ります。スポークはニップル内のネジのかかりしろまであればよいので、溝のツラで測ります。
11.5mmでした。
4.計算する。
ここまで測定した値で、以下の式にすると計算できます。
ERD = A - 2 × ( B - C )
ざっくり絵にするとこんな感じです。
B - C を2倍しているのはリムの反対側も計算に入れる必要があるからです。
工夫してERD計測工具を自作している方もいるようですが、しばらく次のホイールが組めなさそうなのでまた次回にしたいと思います。
ERDが計算できたら、Excelで作ってある計算ツールでスポーク長を計算です、と言いたいところなのですが、今回使用するハブであるFH-T610のフランジ↔︎センター間の寸法が製品ページにありません。シマノの技術資料をたぐります。
2018-2019 SHIMANO Product Information Web
資料によると、フランジ間距離(Flange distance)が59.2mm、オフセット(Offset)が7.8mmとあります。この数字から、フランジ間距離を2で割って、ドライブ側はオフセット分を引き、反ドライブ側にはオフセット分を足すとフランジ↔︎センター間の寸法が出せます。
結果、
ドライブ側:21.8mm
反ドライブ側:37.4mm
となりました。
念のため実寸もします。
エンドにアルミの治具を突き当て、ノギスで測ります。アルミの治具は、以前服部製作所にお願いして作ってもらいました。クイックレバーをしっかり締めると治具が固定できるので、安定して採寸ができます。この時、スポーク穴から採寸すると、シマノの技術資料とほぼ同じ寸法になりました。資料の値で計算して問題なさそうです。
以前にExcelで作成した計算シートにこれまでの採寸結果を入力して計算します。
ドライブ側4本組、反ドライブ側6本組のヨンロク組でいくことにしました。スポーク長が計算できたらおなじみのCirclesでスポークを切ってもらいます。スポークは安価にホシの#14です。
組めました。フレームカラーが緑なのでニップルもアルミの緑にしました。
今回組み立ててみて、反ドライブ側のスポークがだいぶ長いことがわかりました。以前から感じていたのですが、首折れスポークの場合、首の部分が馴染んでくると、予定よりスポーク長が伸びてしまう印象です。このあたりの伸びを補正値として今後は計算に組み込んでいく必要がありそうです。
■自転車への組み付け
ホイールが組めたらあとはちゃっちゃと自転車に組み付けていくだけです。
組めました。
側面から見たら、写真が暗いと変化がわからないくらい見た目では地味な変化です。スプロケットが目立つかな。
ハンドル部はしっかり変わりました。
シフターがレバーの下に隠れるので見た目がスッキリです。
ライダー側から見るとこんなかんじ。
黒で統一されて、引き締まった印象です。ステアリングコラムのトップキャップは、2018年の白州の森バイクロア4でファミリークラス3位入賞の賞品です。スペシャリティある。
気にしていたチェーン暴れですが、
変更前と比べるとリアディレーラがスタビライザーのおかげで暴れないので、全然違います。チェーンリングは初期についていたものですが、現時点では外れる気配はなさそうでした。このまま行けそうです。変速についても特に問題ない印象です。
息子に実走で変速の調子を確認してもらいました。早速近所の公園の階段を乗車で下って、チェーン暴れが少ないことに満足してもらえたようです。シフトダウン時に親指をだいぶ押し込まないといけないことに少し戸惑ったようですが、全体としては問題なく変速できるとのこと。シフターの取り付け位置も微調整が効くので、ある程度の握力がついてきたら子供用自転車でもグリップシフトよりラピッドファイヤーのほうが良さそうです。
地獄の猛暑もやっと落ち着いてきたし、あとは思う存分走ってもらうだけですね。