【自転車実験室】シクロクロス用にチューブラーホイール/タイヤセットを製作した
すでに2019-2020のシクロクロスシーズンは始まっているのですが、今頃今シーズン用のニューホイールセットを準備しました。仕事もプライベートもいろいろあってホイールを組んでいる時間が全然なく、休みの朝も全然起きられなくてトレーニングもろくにできていない。仕事の都合で東海シクロクロス第2戦「ふれあいパークほうらい」もパスしてしまう始末。しかし次は最も楽しみにしている第3戦の「ワイルドネイチャープラザ」。ここに今できる全力を投じるのです。
今回の機材アップデートは昨シーズンに安価で買ったチューブラータイヤ「A.Dugast Small Bird 33 」。サイドウォールがネオプレーンコーティングされており、従来のコットンより耐久性が高いのがウリです。タイヤのノブが他と比べて小さいですが、ワイルドネイチャープラザに最も重きを置いて選定したので悔いはありません。もちろん、東海のシクロクロッサーである私はIRCのチューブレスタイヤの良さを知っていますし、その有り難みも日頃感じているのですが、シクロクロス愛好家として一度は伝統のチューブラータイヤを使ってみたかったのでした。今まで経験した自転車整備で最も手間がかかった「シクロクロス用チューブラータイヤ貼り」の始まりです。
■リムはTNI
チューブラータイヤを使うためにはチューブラーリムが必要です。せっかく安く買ったタイヤ、リムも安価に抑えるため、これを選びました。
TNIのチューブラーリム、「CX22」です。リム高22mm、リム幅23.2mmとワイドリムです。1本¥4,200(税別)。前後分2本でも¥10,000しません。
重量は公称415gに対して、
413gと、
410gでした。
重量公差で考えると公称-2%以内に収まっているので、私の個人的な感覚では十分良心的な製品です。塗装の見た目も美しく、穴のバリも少ない。高品質に感じます。デカールはデザインが気に入らない上主張が激しすぎるので剥がしました。
■ホイール組み
昨シーズンまでVelocityのA23でチューブレス運用していたホイールをばらし、Dura-Aceのハブを流用して組みます。
組めました。前輪は28hのイタリアン4本組、後輪は28hのイタリアンヨンロク組です。スポークはお気に入りの星スポーク「WingStar」です。色がイイんです。
ホイール組は相変わらず楽しいですが、素人には数がこなしにくいのが問題ですね。もともとのリムのデカールははがしましたが、今回は別にデカールを貼りました。スポークを注文したところ、星スポークの営業担当から「もっと使って(意訳)」のお手紙とともにデカールが同封されていたのでリムに貼ることに。
なかなかかっこいい。
あとは、組む時にしか貼り付けられないように、私が最も愛するハードウェアをモチーフにしてステッカーを作りました。ステッカーの材料はエーワンのラベルシール「超耐水」を使いました。
このステッカーがいつまで過酷なシクロクロスでもつか見ものです。こういう遊びができるのが自分で組むホイールの良さですね。
■結線用の小手先を用意した
今回の後輪のリムはオフセットリムではないため、やはり反ドライブ側のスポークテンションがタルいです。そこで結線するのですが、前回のはんだ付けの際は小手先の熱容量が小さく、最大まで設定温度を上げてもなかなかはんだが乗りませんでした。
小手先が細い。
はんだこての小手先は必ず劣化するので、交換部品が売っています。今回は一番太い小手先を買いました。
比べると一目瞭然です。
果たして以前よりものすごくはんだが乗りやすくなりました。でも対象物から熱が逃げやすいので、なかなか薄くはんだを乗せるのが難しいのは相変わらずです。今回も芋はんだになってしまいました。まだまだ精進が必要ですね。しかし作業速度は断然早くなりました。道具をしっかり選ぶことの重要性を思い知りました。私は弘法ではないから筆を選ばなくては。
とりあえず結線出来ました。
■チューブラータイヤの貼り付け
さて、ホイールが組みあがったらタイヤの貼り付けです。話が前後しますが、昨シーズン買ったチューブラータイヤは、以下の写真の状態で保存していました。Circlesのマコさんから、「リムに乗せて少し空気を入れて保存するとよい」と教わっていたので、組む前のリムに乗せて少し空気を入れてラップでくるみ、押し入れに保管していました。たまに取り出して空気を入れてを繰り返し約1年。
タイヤの「ふんどし」にきっちりリムの型が着きました。これはタイヤを貼ったときに密着度が高そう。
タイヤを貼る前にリムに下処理としてマスキングをします。リムセメントがブレーキ面についたら除去が大変なので。
日東電工の床養生用を買いました。テープ幅が狭くリムにちょうどよさそうです。
貼れました。思った通りリムの高さにちょうど良く、貼りやすかったです。
前後とも貼ったら、リムセメントを塗るためにスタンドに設置です。後輪はクイックを挟むタイプのスタンドがちょうどよかったですが、前輪は使わなくなったミノウラの振れ取り台を使いました。こんな形で役に立つとは。
リムセメントはパナレーサーです。
ふたに刷毛がついています。個人的にはあまりにおいがキツくない印象。
塗ります。仕事から帰ってきて呆然としたまま1回/1日、3日間塗りました。リムセメントを塗ったら風呂に入って寝る生活。
リムセメントを塗ったホイールを床に転がしておくと自分や家族が脚をひっかけて不幸なことになるので、ミノウラのバイクタワーに付けてあるホイールラックで保管します。
リムセメントを塗り始めて3日目、この日はタイヤ側にもリムセメントを塗ります。タイヤに空気をある程度入れると、上の写真のように「ふんどし」側が上を向きました。この状態で塗っていきます。
「ふんどし」にピントが合っていませんが、ふんどしを観察するとフチにしっかり接着剤が含侵しています。丁寧なつくりを感じます。
「ふんどし」にリムセメントをしっかり塗り込みます。「ふんどし」の繊維にリムセメントが染み込むように、刷毛の先を押し付けるように塗りました。
塗り終わったらタイヤが横を向く状態でぶら下げて1日眠らせます。こちらも床に転がしておくわけには行かない。
4日目、いよいよタイヤの貼り付けです。リムセメントはおそらくきっちり塗れたはず。私にとって初めてなので信じるしかありません。
レース中にタイヤが剝がれてほしくないので、最大限の手を打ちます。Simworksで取り扱っている「CXテープ」を貼ります。バルブホール付近に貼れないのが気になる。うまい方法はないものでしょうか。
リムに密着するようにしっかり押して貼り付けます。
この後はテープの保護紙をはがし、その上からリムセメントを薄く塗って、「CXテープ」が溶けるのを見計らってタイヤをセットしました。ここからは勢いだったので写真を撮る余裕はありませんでした。「難しい」と聞いていましたが、とにかく難しかったです。リムから外れにくいように当然ながらタイヤは固く、乗せるだけでもかなりの腕力が必要で、「CXテープ」が固まる前にアライメントを取らなければなりません。タイヤを掴んで持ち上げるようにずらして修正、センターが出ているかチェック。少し波打ちましたが諦めました。これを書いている今、手の親指の付け根が筋肉痛です。
何とか乗せ切ったのですが、この通り溶けた「CXテープ」がタイヤサイドに付着してしまいました。正直言って自分が知っている自転車整備の作業の中で、「CXテープを使ったシクロクロス用チューブラータイヤをリムに貼る」という作業が最も難易度が高かったです。短時間かつ不可逆の作業は難易度高い。ホイール組のほうがよっぽど簡単です。この困難な作業をなじみの自転車店Circlesでは1本¥4,000程度の工賃で対応してくれるとのこと。正直破格であります。次回からは頼みたくなりましたが、「CXテープ」が余っているので、もう1回は挑戦してみたい。
さてタイヤを貼り終わったので、リムセメントと「CXテープ」が硬化するまでまた1日寝かせます。
1日経って接着状態を確認すると、バルブホール付近に隙間があります。可能な限り押し込んだつもりですが、イマイチの密着度。ここから浸水して接着剤が痛むといけないので、隙間をコーキングします。
セメダインの「バスコークN クリア(半透明)」です。学生の時ツーリング中に立ち寄った「Japan DIY Show」にて、小汚い学生の私にカタログと携帯ストラップをプレゼントしてくれ、丁寧に説明をしてくれたセメダインの方にはいまだに恩を感じており、それ以来接着剤はセメダイン派です。コニシボンドは買わない。
タイヤとリムの隙間にコーキングをヘラで押し込みながら塗布します。
コーキングが終わったら、コーキング材の表面が硬化開始する直前にマスキングをはがします。また一晩寝かせます。それにしてもチューブラータイヤ貼りは時間がかかります。チューブレスタイヤの運用の楽さを思い知りました。
■自転車に組付け
シクロクロスを始めてからn年、ついに待ち望んでいたこの時が!
カッコイイ・・・
なんだろうこのカッコよさ。
ピントがデカールにあっていない
この黒いリムに青ニップル、そして「WingStar」の鈍い銅色の組み合わせが凄くかっこいいと思うんですよね。これにスキンサイドのチューブラータイヤがさらにかっこいい。自分の走りはともかく見た目性能が無茶苦茶アガりました。今後も「WingStar」を推していきたい。売れないとディスコンになってしまうので、私のために皆さんに使ってもらいたい。
何とか'19/12/15の東海シクロクロス第3戦「ワイルドネイチャープラザ」に間に合いました。もともとこのタイヤを使いたかった一番の動機は「砂を低圧のタイヤで走ってみたい」というもの。トレーニングが全然できていないので成績は望めませんが、今までと走りごたえがどう変わるか、とても楽しみです。頼むから剝がれないでくれ!