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技術系サラリーマンの生活実験

【書評】後は野となれ大和撫子 著:宮内 悠介

日本SF大賞の受賞暦がある宮内悠介の著書は初めてです。Facebookのタイムラインで本書を知り、Kindle版ならすぐに買えるので購入。その日のうちに読んでしまいました。

 

あとは野となれ大和撫子 (角川書店単行本)

あとは野となれ大和撫子 (角川書店単行本)

 

 

中央アジアの架空の小国アラルスタン。後宮(ハレム)の制度があり、初代大統領は文字通りの後宮と、大統領諮問機関としての役割を担わせ、さらに女性を囲うことに興味がなかった二代目大統領が、戦火等で行き場を失った女性を出身国問わず受け入れ、高等教育機関としてそれを発展、国力を養う場としている設定です。

 

2代目大統領が暗殺され、国の危機であるのに政治の中核を担っていた男たちは逃げ出し、まさに国が倒れようとするその時、後宮の女性達は自分達の居場所を守るため臨時内閣を組閣し、国を守るための戦いを始めます。

 

正直私は中央アジアの歴史や情勢に疎く、作中の設定は馴染みがない物ばかりなので、設定に細かく突っ込みを入れずに純粋な娯楽作品として読む事ができました。冒険活劇というべきなんでしょうか。戦い、駆け引き、窮地に追い込まれる主人公、運命的な出会い、など盛り沢山です。

 

と、ここまでは安っぽい紹介しかできないのですが、私なりの本書の面白さを考えた時、「ニヤニヤしてしまう」だと思います。

 

正直いろんなものを詰め込み過ぎだと思うんです。でも、作中に詰め込まれたものが多いため、どれかが引っかかってニヤニヤしてしまう、そんな感じです。アマゾン等の紹介文を読んで本書を「読んでみようかな」と考える方は、何らかの「オタク気質」を抱えていると思います。それがどんな方向性であっても、作中の何かがその「オタク気質」に引っかかると感じました。私は「オタク気質」を「マイナなものを愛する心」と捉えているのですが、そもそも読書自体がマイナな趣味なので、つまり本書は読書が好きならきっと楽しめるはずです。

 

 「オタク気質」を抱えすぎている私にはニヤニヤしてしまうシーンが多かったと同時に、唸るシーンもありました。特に「三権分立」の下りはしびれました。ここはぜひ実際に読んでいただきたいと思います。

 

相当綿密な取材に基づいたと思われる情報量で、重たいテーマながら勢いよく、明るく物語が進んでいきます。

自分の中に何らかの「オタク気質」を抱えている方に、本書を強くオススメします!

・・・そんなに「オタク気質」」を抱えていない人にも、きっとオススメできると思います。多分。