【自転車実験室】手組みホイールのスポーク長を計算する。
2015-2016年東海シクロクロス最終戦には、もう一つテーマがありました。
「自分で組んだホイールで走る」
というものです。
数年前に買った、技術的な話が好きな自転車乗りならみんな読んでると思われる名著、
「ロードバイクの科学(著:ふじい のりあき ISBN:978-4-7899-6165-3)」
に手組ホイールの記述があります。工作やらが大好きな私としては、初めて読んだ時から、いつか手組ホイールに挑戦してみたいと思っていました。ホイールを組む目的はチューブレスタイヤの導入です。それだけならシマノの完組ホイールを買えばいいのですが...
「自分で組んだホイールでレースを走るなんて、自己満足度が高すぎる!」
ホイールを組む上で重要な要素として
・リムの寸法
・ハブの寸法
・スポークの長さ
がありますが、この中でスポークの長さだけが計算が必要な要素になります。
(他は仕様書か実測で確認)
早速Excelで計算してみました。計算方法は「ロードバイクの科学」の考え方をそのまま流用させていただきました。
初回の計算結果が以下の通りです。(単位:mm)
25列目の「L'(typ)」が計算されたスポーク長です。この結果を元に、いつもお世話になっている自転車店Circlesにスポークの購入依頼です!
ところが、お店で検算をお願いしたところ、「長すぎるのでは」という指摘が!!
検証の結果、18列目の「L^2」、余弦定理の計算式に問題がありました。
最初に入力されていた式が、セルB18の場合
=(B10/2)^2+(B11/2)^2-(2*(B10/2)*(B11/2)*COS((360/B17)*(B16)))
問題はこの式のCOS( )の記述です。
今回28穴のホイールを組むにあたり、スポークパターンは「4本組」としました。
スポーク長を計算するには余弦定理が必要になるのですが、その時のCOSの角度の出し方は以下の通りです。
ハブ側の穴を4個おきに使うので「4本組」です。(この時は4本組=4crossと勘違い
していました)
360°を28穴で割って、4を掛けるとホイールを側面から見た時のスポーク長さが出せます。それで上記の式だったのですが...
ここでわかったのが、excelで三角関数に角度を入力したい場合、
COS(RADIANS(角度))
と記入する必要があったのです。普段使わないのでなかなか気づけませんでした。
で、修正した結果が以下の通りです。
※あくまで私の計算結果です。数字を流用される方は自己責任でお願いします。
セルB18の記述は、
=(B10/2)^2+(B11/2)^2-(2*(B10/2)*(B11/2)*COS(RADIANS((360/B17)*(B16*2))))
となりました。表も、16列目は「4本組=2cross」なのでそうなるよう修正、19列目のスポークテンションは、テンションメータの値やリムの最大スポークテンションの表記が「kgf」だったため単位を合わせました。
わざわざこんな事しなくても、Circlesではスポーク長も計算してカットしてくれるし、部材の一括購入でホイール組み工賃無料という究極のサービスがあるし、webにも計算ツールは存在しています。でも、何かとやってみたくなっちゃう私としては、得た知識で実験してみたかったのです。Excel関数の知識も増えました。高校1年で習った余弦定理、その時はなんのこっちゃと思っていましたが、こういう形で役に立つのですね。
◾️まとめ
・スポーク長の計算には、余弦定理 が必須(ピタゴラスの定理も)。
・Excelで三角関数の計算に角度を使いたい場合は、関数「RADIANS()」が必要。
実際のホイール組でも失敗があったのですが、それはまた別の機会に。
※Excelの各行の解説
ERD:有効リム径
PCD:ハブ穴のピッチ
F-C:ハブのフランジとフランジセンターの距離
Rim Center Offset:リム中心のオフセット量
Hole Diameter:ハブ穴の直径
Spork Diameter:スポークの直径
Cross:スポークの交差数。4本組=2cross
Hole:リムの穴数
L^2:ホイール側面から見たスポーク長さの2乗(余弦定理の計算結果)
Tension:目標スポークテンション
L':スポーク長さの計算結果
δ:目標スポークテンション時のスポーク伸び量
θl:ホイール正面から見た時の、リムに対する半ドライブ側のスポークの角度
θr:ホイール正面から見た時の、リムに対するドライブ側のスポークの角度
Fl/Fr:半ドライブ側とドライブ側のスポークテンションの比
L'(typ):スポーク伸び量などの補正を考慮した、スポーク注文時の寸法