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【書評】3001年終局の旅 著:アーサー・C・クラーク

SF映画の金字塔として、「2001年宇宙の旅」を上げることは許されると思うのですが、それなりにSF小説を読む方でなければ、原作は読んだ事が無いのではないでしょうか。

 
アーサー・C・クラークは、著名なSF小説家ですが、同時に人工衛星をリレーして通信を行うアイデアを発案した、現代の人工衛星通信の父でもあります。その作風から、大変な知性の高さと想像力を知ることができます。
 
クラークの代表作、と呼ばれる著書は、ハードSFを読みたい方にはどなたにもオススメしたいのですが、最近読み直した「3001年宇宙の旅」も改めて十分に楽しめるものでした。
 
 
2001年宇宙の旅」の映画を見たことある方は多いと思うのでネタバレですが、HAL9000の反乱(判断?)で宇宙空間に投げ捨てられたフランク・プールが1000年後(!)に回収され、モノリスを中心とした人類最大の危機に挑む、というものです。
 
プールが目の当たりにする3000年代の人類の暮らしは正にユートピアですが、今となってはイメージしやすい近未来とも言えます。ただ、本書の刊行年は1997年です。Windows95がリリースされて少し、一般人がインターネットの恩恵を受け始めた時代にここまでとは。私が最初に読んだのはもう10年以上前ですが、その時でも大変楽しめました。
 
クラークの作風は、全体的に「楽観的」であると言えます。圧倒的な科学知識に基づき、何というかワクワクしながら読める、「科学の子」にピッタリの内容です。作中で起きる「危機」も、人類を超越した何かの意思によるものか、人類の無知によるものがほとんどで、そこに知的好奇心が刺激されるのです。
巻末の著者による解説も作品を補完するものとして面白いです。
 
「宇宙の旅」シリーズは、2001年→2010年→2061年(番外編)→3001年と4部作となっており、全て読むとたっぷり楽しめます。2001年のインパクトはやはり大きかったですが、それ以降の作品も想像力をかきたてる良作です。梅雨時も近づいていますので、外に出かけられない時にSF小説などはいかがでしょうか?