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【書評】アンドロイドの夢の羊 著:ジョン・スコルジー

この前読んだ「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」をオマージュとしたタイトルの本書。著者のジョン・スコルジーの本は以前に「レッドスーツ」を読んでおり、大いに笑ったのを覚えています。「スタートレック」シリーズなどが楽しめる人であれば大いに「笑える」と思います。

 

 アンドロイドの夢の羊 Amazon.co.jp

 

SF小説、特に日本の作品の印象としては、ハードで真面目な物が多いように感じます。ニヤリ、というものはもちろん多いのですが、「爆笑」はあんまり無いと思います。

 

SF小説に「爆笑」を持ち込める作家、ジョン・スコルジーの本書の第1章は、強烈な物でした。ちょっとこのアイデアは思いつかんと言うか、SF史上では無いネタでは無いでしょうか。ビジュアルを想像すると本当にシュールで、もう何というか表現しづらい。

 

強烈な個性の宇宙人と地球の交流がある時代の設定で、タイトル通り羊を巡る冒険が繰り広げられます。旧約聖書の時代から、西洋人は羊を巡る物語が好きなんですね。牛でも豚でも鳥でもなく羊。これは今の私にとっては謎です。

 

本書はハードSFという訳ではなく、SFの体をなした娯楽作品です。笑いあり悲劇あり戦いありグロあり、色恋は無し。決して為にはならず、只々面白いと思える作品です。主人公がスーパーマン過ぎる気もするけど、テーマである羊の正体はなかなか驚きましたし、お話の落とし所も私には満足がいくものでした。

 

それにしても、出てくる宇宙人のディテールは、妙に描写が細かく変質的な印象を受けます。著者はちょっと頭がおかしい(褒め言葉)んでは無いか、と思っていましたが、元々はノンフィクションライターとのこと。ひょっとしたら、物語の体をとったノンフィクションのつもりで書いているのかもしれません。

 

Amazonkindle版では試し読みが可能です。試し読みの範囲が面白ければ、きっと楽しめると思います。子供には薦められませんが、分別のついた大人への娯楽として、本書はオススメします。

 

今は第1巻がスコルジーの最初のSF小説出版物である、「老人と宇宙」シリーズを読んでいます。こちらはメインストーリーは3部作で、入隊資格が75歳以上の老人(!)であるという宇宙軍の戦いを舞台にした物語です。こちらも娯楽作品として大変楽しんでいます。気になる方は是非。