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技術系サラリーマンの生活実験

【書評】最後の不良 著:小川 哲 Pen2017/11/1号掲載

泣ける。そんなお話でした。

別に、実際に涙を流すわけではないのです。が、心にしんみりとくる何かを感じ取る瞬間があると思います。そういう時を「泣ける」と表現してもよいのではないでしょうか。

 

Pen (ペン) 2017年 11/1号 [映画・小説・マンガの名作から最新作まで SF絶対主義。]
 

 雑誌「Pen」の2017/11/1号の特集は、「SF絶対主義」。この秋には「ブレードランナー2049」も公開される事ですし、少しはSFが流行る機運が高まってもいい時期です。もちろん「SFそのものが流行る」時期なんて永遠に来ないのですが。

 

本作は雑誌「Pen」の特集「SF絶対主義」のために書き下ろされた短編小説で、ハヤカワSFコンテスト受賞歴のある小川 哲氏の作品です。流行りをあまり気にしていない私なので、著者の作品は知らなかったのですが、まさに「流行りをあまり気にしない」などとヌカす私のような人間を撃ち抜く作品でした。

 

人は流行りを求めることで人と差別化したいと望み、それによって型にハマり普通になっていく。アチコチで延々繰り返されているこの話題で、数多くの作品が生み出されるわけですが、なんでこの手の話はこんなに面白いんでしょうか。ある種自虐的な笑いを誘うのか、読んでいて何回もニヤニヤできました。

 

雑誌はごくたまにしか買いませんが、Webメディアで出会えなかった特集が読めると、価値があるな、と感じます。雑誌の価値って、特集の面白さもありますが、「想定外の情報に出会える」ということだと思っています。今回の短編小説集「最後の不良」以外にも、読もうかな、と思っていたけどまだ読んでいない作品の紹介や、見れていない映画の話など、刺激がありました。

 

申し訳ないけど、多分この号はあまり売れないでしょう。でも、私は「読者が新しい情報に触れることが重要なんです」というメッセージを確かに受け取りました。この受け取り方がそもそもジョークだったのか?そう考えさせてくれる良作でした。

 

私は書店で買いましたが、書店に行かなくてもKindle版なら雑誌まるごとで¥500。次に読むSFを決めかねている人に是非オススメします。