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技術系サラリーマンの生活実験

【自転車実験室】グラベルロード用のホイールを組んだ話

久しぶりに新しく自転車用ホイールを組むことになりました。最後に組んだのが2020年8月ですから,約1年と10カ月ぶりになります。新しく組むだけじゃなくて組み直したいホイールもあるのですが,なかなか都合がつかずすっかり間が空いてしまいました。

今回組むのは2022年6月現在流行っているグラベルロード用のホイールです。最近流通しているグラベルロード/シクロクロス用のディスクブレーキホイールはほぼ12mm軸のスルーアクスルですが,私にとっては初の仕様でである上に,組み上がってもまだ使う自転車はありません。組んだホイールを使う自転車をイメージしつつ,楽しいホイール組みの始まりです。

 

■仕様

今回の部品表です。副資材のスポークプレップは書いていません。

Excel等にコピペできるような形式で埋め込みたいのですが,微妙に面倒で画像貼り付けしてしまいました。今後改めます。

組み方は

フロント:JIS組み,ディスク側2クロス,反ディスク側3クロス,両側エアロ

リア: JIS組み,ドライブ側2クロス,反ドライブ側3クロス,反ドライブ側エアロ

です。フロントは逆イタリアンでも問題ありませんが,今回はディスクブレーキ用のホイールを組むので,後述する後輪の参考図をひっくり返せばパターンが確定するのでJIS組にしています。リアの組み方は「のむラボ」の「異径異本組み」を真似してみたくて選定しました。理屈が説明できるほど理解できていませんが,まず組みごたえがどうなるのか試してみたい,ミーハーな理由からです。

 

■使用する部材

(1)リム

EASTON CyclingのR90SL ディスクブレーキ用リムを選びました。28hです。

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EASTON CyclingのアルミリムモデルEA90SLホイールセットに使用されているリムを単品販売しているものです。各種調べたのですが,アルミのディスクブレーキ用リムとしては価格,性能,調達性,カッコよさを総合して,2022年6月現在私の中で一番リーズナブルなディスクブレーキ用アルミリムに感じます。

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リムブレーキでいうところのブレーキ面に当たる部分をよく見ると段差があります。おそらくリムブレーキモデルのブレーキ面を削る前のリムをディスクブレーキ用として販売していると思われます。リムブレーキモデルとディスクブレーキモデルで価格は同じなので,切削加工の工賃が発生する分リムブレーキモデルのほうがお得ということになります。

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で,私にとって重要なのがこのビードが乗っかる部分に「ハンプ(凸部)」があるかどうかです。このハンプがチューブレスタイヤが低圧の時にタイヤの外れ止めとして効いてくるので重要です。R90SLはニップルを通す穴がハンプにかかっていないことも好感度が高いです。

ハンプに関する過去の考察はこちらです。

 

リムの重量も図ってみました。

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公称455gに対して448g(-1.54%)と450g(-1.10%)で,公称値から5%以内のずれで優秀です。

 

(2)ハブ

グラベルロード用ホイールということで,ハブもグラベルロード用コンポーネントGRXのシリーズ品を使うことにしました。HB-RS770とFH-RS770です。フランジを境目にハブ胴がシルバー,フランジ外側がブラックの凝った意匠です。

正直完成した時のホイール重量にあまり興味はないのですが,とりあえずハブの重量も流れで確認してみました。

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フロントの重量は127g,

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リアは294gでした。こんな情報参考になる人いるのかな。

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重量よりもこのハブの大事なポイントは「エアロスポーク対応」であるということです。しっかりスポーク穴が鍵穴型になっていて,エアロスポークが使える造りになっています。逆に「エアロスポークで組んでね☆」というシマノの意思を感じます。今回私が使う星スポークのエアロはバテッド部の長辺が2.35mmなので,この加工がなくても穴には通るのですが・・・もうちょい長辺が長いエアロスポークを使いたい方には良いハブではないでしょうか。

 

(3)スポーク

星スポークのWingStarスポークです。

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この経年退色した真鍮のような鈍い色がいいんです。色味がすごく気に入っています。これまでシクロクロス用,ロード用,MTB用と組んでこれが4セット目になります。ホイール組を趣味とする素人としては,日本国内ではWingStar使用率は私が一番多いんじゃないでしょうか。次は通勤用ピストのホイールもWingStarスポークで組もうと思っています。

星スポークから直販すると長さは偶数単位になります。今回計算上フロントのドライブ側とリアの反ドライブ側の長さが同じになったので3種類注文です。

 

星スポークはスポークを注文すると真鍮ニップルはセットでついてきます。これを¥3/個のアップチャージでカラーアルミニップルに変更できます。今回もアルミニップルをお願いしたところ,「前も注文してくれたから」という理由でアップチャージなしでカラーアルミニップルにしてくれました。感謝です。

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今回青を選んでいます。太陽の下で見るとターコイズに近いかな。DT SWISSのアルミニップルより明るい色です。

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左が星スポークのアルミニップル,右がDT SWISSのアルミニップルです。こう見ると形状が全然違います。単純な比較はできないと思いますが,DT SWISSはリムとのあたり面が分厚く,ニップルの首が飛ぶ対策なのかなと見受けました。ニップルも細かいところに設計思想が現れるのが面白いです。

 

■準備

(1)スポークパターンの確認

久々のホイール組みですし,素人にとってはタンジェント組は通すスポークを間違えやすい作りです。今回は部材が届く前に組み方をシミュレーションしました。

まずは編み方とバルブホールの位置を確定するために絵を描きました。暖色系の線がドライブ側,寒色系の線が反ドライブ側のスポークです。後輪を描いていますが,今回の組み方ならドライブ側をディスクブレーキ側と捉えたらそのままフロントに利用できます。

 

こうやって絵を描いたとしても,最初のスポークを通すときに勘違いして通してしまうのがやりがちで,念を入れてハブへのスポークの入れ方も絵に描きました。参考としてついでにイタリアン組みの場合も描いています。

ハブのロゴ中心は,少ない経験で知る範囲でははほぼドライブ側の穴と位置が合うように印刷されています。ここをスポークを通す起点にします。スポークパターンもハブへの通し方もExcelの図形で描いた単純なものですが,これがなかなか参考になります。仕事でも煮詰まった時に下手でもホワイトボードに絵を描いてみると気づきがあったりするのと同じですね。

 

(2)スポークプレップの塗布

ホイールを組み上げた時のねじロック剤として有名なのがWheelsmithの「スポークプレップ」。スポークのねじ山に塗布します。馴染みの自転車店CiclesかCultureClubにお願いすれば安価な工賃で塗布してくれるのですが,最近プライベートが忙しくてお店が開いている時間に持ち込みできないので,自分で塗布するために通販で購入しました。

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これでいったいホイール何本分だろう。100本は組めるだろうか。残りの人生で使い切る自信はありません。ただ乾燥しても水で緩めて使えるようなので,それなりに長く使えそうです。次は通勤用ピストのホイール組みに使う予定なので,今回1回こっきりではありません。

 

なお完全に俺得情報ですが,添付のマニュアルをGoogle翻訳のARに仕掛けました。

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読む限りではポイントはスポークのねじ山をしっかり洗って,適切な量を塗布することだけみたいですね。

 

パーツクリーナーでねじ山を洗浄してから塗布してみました。

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ちょっと多すぎたかな・・・まあ初回ですしヨシとしましょう。しっかり乾燥させておきます。

 

■組み立て

特に書くべきこともなく,あっさり組み上がりました。

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「異形異本組み」の組み応えは,「かなりしっかり目に組めた」です。具体的に数値を見える化するのが面倒なので次回以降に回します。でも「かなりしっかり目に組めた」です。次も同様の組み方にします。

手持ちのPWT製振れ取り台はスルーアクスル用アダプタも添付されており,12mmスルーアクスルハブでも何の問題もなく使えます。この振れ取りの時間は私にとって大変楽しい時間で,熱中してしまい写真を撮る暇はありません。縦振れ→横振れ→縦振れ→横振れ→と少しずつ振れを追い込んでいくのが本当に楽しい。やはり少なくとも年1回はホイール組みをしたい。

 

ここまではいいんです。問題は後輪の結線です。振れ取りとは別日に実施しました。

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今回28hのリムを使っており,後輪の反ドライブ側のみ結線したので合計7か所ですが,結び終わるまでの時間は前後ホイールのスポーク通し,振れ取りの合計時間よりかかりました。7か所結ぶまで何回も結び直しをしています。ステンレスワイヤーの張り具合,巻き方を試行錯誤しているとなかなかうまくいかず,やっと及第点といったところです。

Google検索しても結線の結び方は具体的な解説は少ない(ほぼ無い)のですが,今回その理由がわかりました。単純に結ぶ過程を説明するのが面倒臭い。途中の過程を自分で写真に撮りながらは面倒だし,写真が面倒だからといって絵にするのも難しい。多分動画で記録するのが良いのかと思いますが,もう結び終わったのでまたやり直したくありません。

そこまで面倒ならやらなきゃいいのですが,結線した後の反ドライブ側スポークの張り具合を確認するとやっぱり結線したい。世間では結線は走りに対して効果はほとんどない,という説が主流のようですが,個人的には「アリ」と思っています。やれるなら効果についてしっかりお金をかけた実証実験をしてみたいです。

 

さて,結線し終わったらステンレスワイヤーの解け止めとしてはんだ付けです。これまで満足のいくはんだ付けができていないので,今回は最終兵器を用意しました。ステンレス用のはんだとフラックス,

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そして板金用のはんだこて(100W)です。

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はんだこては使ったあとに写真を撮ったのでヒーター部が虹色に焼けています。

今回この組み合わせでのはんだ付けはおおよそ想定通りのはんだ流れ(フィレット)で作業ができ,はんだ付け「だけ」なら満足いく結果になったのですが,今回もしくじりがありました。

以下の写真の結線部付近が,WingStarの鈍い色ではなく光沢があるのがお分かりいただけるでしょうか。

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特にハブのスポーク穴と結線部の間にポツポツと光沢の点があるのが見えるかと思います。

ステンレス用フラックスがWingStarのコーティングを剥がしてしまい,ステンレス地金が露出してしまいました・・・フラックスの特性を考えたら十分想定できる話なのに,マスキングせずに作業してしまった自分が情けない。ブレーキディスクで隠れるから目立たないのが幸いです。次回からはしっかりマスキングしてはんだ付けしたいと思います。はんだ付け自体はこれまで経験があるのですが,無洗浄フラックスに慣れ切っており,洗浄が必要なフラックスの浸食性を甘く見ていました。まだまだ修行が足りませんね・・・

 

■完成写真

完成しました。梅雨時なのに完成を待っていたかのように快晴のお昼でした。ホイールを受けているのはIKEAのコルクコースターです。安くて気に入っています。

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なかなかカッコええんちゃうかな。

 

星スポークからスポークを直販するとデカールをオマケで付けてもらえます。ディスク側のバルブホール反対側に貼りました。気に入っています。

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スポークのコーティングが剥げてしまった結線部分も太陽の下だとそこまで目立たない感じです。「ブレーキディスクで隠れるからヨシ!」ということで失敗を自分の中にしまい込んで次回のホイール組みに活かしたいと思います。

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さて,グラベルロード用にホイールを組みましたが,冒頭に書いた通りこのホイールを組みつける自転車はまだありません。タイヤが装着され自転車に組み付いた姿は,おそらく2022年7月末にお披露目できるかと思います。今しばらくお待ちください。