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【書評】旅のラゴス 著:筒井康隆

SF小説好きを名乗っておきながら、お恥ずかしい事に筒井康隆の著書は読んだ事がありませんでした。

 

旅のラゴス (新潮文庫) | 筒井 康隆 | 本 | Amazon.co.jp


読んでいなくても名前は知っている大家ですし、故今敏監督のアニメ映画「パプリカ」の原作である事でも存在は知っています。「パプリカ」は今敏の病的なまでの夢の演出で恐ろしいビジュアルでしたが、それを表現させる著者の表現力は、凄まじいのだろうと期待しての読書です。
 
きっかけは書店で見た帯に「口コミで話題」と書かれていた事です。古い作品のはず。何が話題となるきっかけだったのか、と思っていたら、どうやら「スタジオジブリでアニメ化」というデマが流れた事がきっかけのようです。
 
お話は本当に主人公ラゴスの旅を描いただけのものですが、なるほどスタジオジブリでアニメ化しやすそうなファンタジックな内容です。若干SF要素もあると言えばありますが、正直言うとそれが重要という訳では無いと感じました。
 
このお話の面白さは、空想の世界なのに情景を思い浮かべやすい描写です。決して詳細ではないが、よく「見える」のです。文体は時代を感じさせますが読みにくい事はなく、情景を感じさせる。
 
著者の他の作品を読んだ事はありませんが、簡潔な文章で情景を感じさせる巧みな表現するのが、筒井康隆の魅力なのではないでしょうか。

前述した「パプリカ」も、公開当時は「映像化不可能と言われていた...」とあおり文が付いていましたが、読書が想像力を発揮できる文体だからこそ、人それぞれのビジュアルが生まれ、映像化不可能な作品となっていたのでは、と感じました。次の筒井康隆作品は「パプリカ」を読む事にします。

ところで、ラゴスの旅の終着点はどこだったのでしょうか?エンディングの感じ方で、旅に対する自分の捉え方、立ち位置がわかると思います。あなたの旅の位置付けは、いかがでしょうか?