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技術系サラリーマンの生活実験

【書評】バビロニア・ウェーブ 著:堀晃

 「光」は「側面」から「見る」ことができない。それがたとえ強力なエネルギーを持っていたとしても。

 

Amazon.co.jp: バビロニア・ウェーブ (創元SF文庫) 電子書籍: 堀 晃: Kindleストア

 

AmazonKindleポイント還元セール対象となっていたのもあり、前から気になっていた本書、「バビロニア・ウェーブ」を読みました。まさに「ハードSF」と呼ぶにふさわしい内容だし、そのスケールのデカさが私の琴線にグイグイくる内容でした。

 

あらすじはAmazonの紹介文に書かれている通りなので、それ以上の内容が知りたい場合はぜひ本書を読んでいただきたいのですが、「2001年宇宙の旅」のアーサー・C・クラークの著書などに面白さを感じる方であれば間違いなく楽しめる内容だと思います。

 

ハードSFを読むと毎回著者の想像力の広がりに驚かされ、自分の世界の狭さを思い知るのですが、今回も猛烈にその感覚を覚えました。特に、主人公である宇宙飛行士の「マキタ」は、その生い立ちから作中の物事について他の登場人物と違う感覚、違和感を感じるのですが、そのマキタが感じている違和感が、かえって読者である私にリアリティを感じさせるのです。マキタの感じる違和感は、「地球人」であれば感じられないもののはずですが、不思議と自然に納得できて、この感覚は何なのだろうと私が違和感を感じるのでした。

 

私は、これが「ハードSF」の面白さだと考えています。「ハードSF」は、私の解釈だと科学的に正しいと考えられるアプローチで、今あり得ない未来を想像するものです。今の世界と地続きであると思われるのに、驚きと違和感を与えてくれる面白さ。

 

大切なことは目に見えないものなのに、「観測できないものは無いのと同じ」と人間は考えてしまいがち。でも、その目に見えない物も向きを変えたり何かを投げ込んでみると、その反応から存在が観測でき、「有る」ということが認識できる。「あり得ない」と切り捨てる前に、自分の観測方法を変えてみるという思想を常に持ちたいと思っている私としては、それを示唆する内容であるとも感じました。

 

著者はあとがきで作中の「未解決問題」は収集がつかなくなるのでそのままとした、とありますが、この「未解決問題」は読者それぞれの想像力で補われるべき問題だと思います。ハードSFが好きで、まだ未読の方にはぜひおすすめしたい傑作でありました。是非どうぞ。