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技術系サラリーマンの生活実験

【書評】ふわふわの泉 著:野尻抱介

先日読み終えた「バビロニア・ウェーブ」が受賞している星雲賞つながりで、Amazonでおすすめに上がってきた本書を読みました。短めでテンポが良すぎてあっという間に読んでしまいました。


予備知識なしで読み始めたのですが、途中でハードSFの大家、アーサー・C・クラークの「楽園の泉」のオマージュなのだと気付きました。


作中で主人公が発明し、実現する可能性がゼロではない夢の素材「ふわふわ」による世界の変貌を描きます。この技術を採用した結果こうなった、こんな問題が出た、対策したら次の問題が出た、とテンポ良く、悪くいえば雑なストーリーでお話が進んで行くのですが、途中で出てくる登場人物がまさに「クラーク的」で、微笑ましい気持ちで読むことができました。

クラークの代表作として「2001年宇宙の旅」が上げられると思いますが、大雑把に言うと「未知との遭遇」です。本書「ふわふわの泉」もまさに「未知との遭遇」で、「ふわふわ」という新素材との遭遇から生まれる新世界だけでなく、「生命体とは何か」というSF普遍のテーマも扱われます。

本書は最初はファミ通文庫として出版され、ただでさえ注目されにくいハードSFの中でさらに注目されない状況だったようですが、Kindle本だと割引があるし、ハードSFの入門書としておすすめできる物でした。

この本が面白いと思ったらぜひアーサー・C・クラークの著書をおすすめします。